試用期間で本当にクビになるの?
試用期間のクビがこわい
短期離職になりたくない
試用期間って不安になりますよね。
せっかく正社員として採用されたのに、すぐにクビ(解雇)になってしまったら大変です。
試用期間については細かい説明を受けることもないので、「本当に大丈夫だろうか」と早く試用期間が終わるのを祈るばかりです。
ずっと不安だよ
僕は8回転職していますが、やはり新しい会社に入った後の試用期間は毎回不安でした。
僕自身はクビになることはありませんでしたが、クビになるかもしれないという不安がつきまとっていたことは事実。
結論として、人事である僕が言えるのは試用期間でクビになる確率は「かなり低い」ということです。
会社はそこまで強い権限を持っているわけではないからです。
この記事はテーマである試用期間について約30時間をかけて調査と執筆を行っています。
記事を最後まで読んでいただくことで、試用期間に対する不安を解消することができるようになります。
ぜひ最後までお付き合いください!
試用期間のクビが怖いと感じた体験談
最初は僕自身が転職を8回経験して試用期間を体験したことをお伝えします。
また人事として試用期間でクビや、退職になった人たちについてもお伝えしていきます。
結論として試用期間に慣れるということはあまりないと感じます。
試用期間が怖くて全力で働いた
試用期間で退職になった人たち
試用期間が怖くて全力で働いた
僕は転職を8回も経験しました。いろんな会社を経験したことで自分が成長できたと思っています。
転職する度に向き合わなければいけない「試用期間」という存在は、転職回数の多い僕にとってはとても怖いものでした。
「見られている」という感覚が強く、とにかく試用期間だけはミスをせず全力で働くことだけに集中していました。
試用期間でもしクビになってしまったら、職務経歴書に「短期離職の経歴」が増えてしまうという不安があったからです。
試用期間って怖い
試されてる感じが嫌だよね
僕が試用期間を不安に感じる理由は以下です。
苦労した転職活動が無駄になる
新しい職場の地雷がわからない
常に見られている感覚がある
1つずつ説明します。
苦労した転職活動が無駄になる
僕にとっての「転職活動」はどれも本当につらく、苦しい経験でした。
現職に対する不満や、その状況を招いてしまった自分に対する不信感など多くのネガティブな感情と向き合わなければならないからです。
さらにそこまで興味のない会社に対しても、選択肢が限られているため興味を持つようにして転職活動を進めなければならないです。
試用期間はこれらの数々のハードルを乗り越えた先、ある意味で「最終関門」のような位置にあります。
試用期間でもしクビになってしまったら、もう一度同じ転職活動をしなければならないかもしれないのです。
やり直したくない
新しい職場の地雷がわからない
8回転職を経験した僕から言わせると、どんな職場にも踏んではいけない「地雷」があります。
多くの場合、人間関係が地雷である可能性が高いのですが、入社したばかりのタイミングは誰が「地雷」なのかわかりません。
怒らせてはだめな人や、気難しい人などが僕が地雷だと思うタイプです。
特に試用期間はこういった問題のある人と関わって、トラブルに巻き込まれないようにする必要があるのです。
常に見られている感覚がある
試用期間は文字通り「お試し」です。
やや大雑把にいうと、企業にとって条件が揃えばクビにすることが可能な期間だからです。
僕はこのお試し期間が本当に苦手でした。
いつも、どんな行動でも見られている感覚があるからです。
実際にはそんなことはないのですが、試用期間について特に説明を受けることもないので「見られている」という緊張感が常にあります。
そのため僕は試用期間は通常の120%くらいの出力で、周りに気を配り、仕事の成果を出せるように働いていました。
試用期間のクビに怯える人たち
僕には転職をする求職者という立場以外に、もう1つ人事という本業の立場があります。
人事という立場は採用して人を迎えて、ミスマッチによる退職で人を見送るという特殊な存在です。
そのため、試用期間でクビになったり、自ら辞めていった人を見てきました。
切ないね
仕方ないことなんだ
試用期間をどう過ごしていたか、どう感じていたかといった僕なりの視点で見てきたものをお伝えします。
実際は試用期間でクビになった人はほとんどいません。
しかし、試用期間という見られているような期間で、入社時からの状況に変化が起こり実際に退職する人もいたのは事実です。
すべり込み入社で試用期間に怯える
会社に問題がある場合
成績が出せずに退職する営業
1つずつ説明します。
すべり込み入社で試用期間に怯える
試用期間に怯える1番多いケースは、面接をなんとか乗り越え入社した人です。
実力がともなっていれば試用期間に怯える必要はないのですが、面接で背伸びをして入社してしまった結果実務に耐えられないというケースはよくあります。
実際「はやく試用期間を終わらせたい」と不安を抱えていた人を何人も見ました。
ただ残念ながら、実力がともなっていない場合は、試用期間で問題が発覚しなくとも短期離職になる可能性は高いです。
1年から2年という短い期間で自ら退職する人も多くいます。
会社に問題がある場合
試用期間中に人を本当に見極めようとする会社もありました。
僕が見てきた中で1番記憶に残っているのは、鳴り物入りで入社した幹部候補の人が試用期間で退職したことでした。
かなり期待されて入社したのに、経営者が望むような結果を出さなかったためひどいパワハラを受けてしまったのです。
追い詰められた幹部候補の人は自ら退職という選択を選びますが、後に会社を訴訟するという自体に発展しています。
ここまで極端な展開は少ないですが、試用期間で見極めようとする会社は存在します。
こういうケースはあまり多くないよ
成績が出せずに退職する営業
営業会社は厳しい世界です。
僕も仕事を経験したことがありますが、「数字」という成績だけで評価されるので息苦しいです。
かなり体育会系で厳しかった営業会社では、試用期間中でも見込みがなければ厳しい扱いを受けます。
パワハラが横行しているような会社なので、直接的な言葉で追い詰められていました。
退職勧奨とまではいかないものの、入社後実力を発揮できずミスマッチを感じる本人からすればやめろと言われているのも同然。
営業会社のように、すぐに結果がわかるような仕事は試用期間中に辞めることになってしまう人がいます。
試用期間のクビになる確率とは
ここまでは僕が試用期間で経験した内容を中心にお話してきました。
試用期間で何かを「見極めたりする」ということは、現実的には少なかったと感じます。
一方で明らかに実力不足がある場合は、遅かれ早かれ自然と退職という選択につながっています。
ここでは実際に試用期間でクビになる確率についてお話します。
試用期間と解雇について
試用期間でクビになる理由
試用期間のクビが不当になる場合
試用期間と解雇について
ここであらためて「試用期間」とは、会社にとってどんな位置づけにあるのか、全体像を整理してみたいと思います。
試用期間は、採用した人材が「社員として働くことができるのか」を会社が見極めるために設けている期間です。
試用期間とは、採用後に社員としての適格性を観察・評価するために企業が設ける、いわゆる「お試し期間」を指す。
引用:ビズリーチ|試用期間の平均はどれくらい? 解雇される可能性と条件とは
試用期間そのものは法的に定める義務があるわけではなく、試用期間がない会社も存在します。
厚生労働省の調べによれば、試用期間つきで正社員に採用する会社の割合は「約72%」となっています。
ほとんどやってる
採用するリスクは多いからね
また、同調査によると試用期間の長さは「3ヶ月」が1番多く「約67%」です。
6ヶ月以上としている会社は、会社にとって有利な期間を長く設けておりやや警戒する必要があると考えます。
長過ぎる試用期間は働く側にとってはリスクです。過去に試用期間の長さを巡って事件になっているものもあります。
中途採用の「見習」社員から登用試験を経て「試用」社員に登用されたが、その後3回の「社員」登用試験に合格しなかったことから、就業規則に基づき解雇されたXが、当該解雇は無効であるとして地位保全等を求めて仮処分を申請したもの。
引用:厚生労働省|ブラザー工業事件 (S59.3.23名古屋地判)
ちなみに試用期間中14日以内であれば、労基法21条によって会社は解雇することが可能です。
その場合は解雇予告手当も解雇予告も不要とされています。
え、怖いんだけど
解雇するつもりがあるのであれば、14日以内に動く方が会社としてはハードルが低いです。
逆に14日を超えた場合はそれなりに厳しい条件をクリアしなければ解雇はできないのが実際のところになります。
また解雇とはクビのことですが、会社は簡単にクビにすることはできません。
引用の4つの観点で十分に条件を満たしていることがわかって解雇がようやくできます。
人員削減の必要性があること
引用:ベリーベスト法律事務所|会社はどんな時に解雇できるのか?
会社が解雇を回避するための努力をしたこと
人選が合理的であること(恣意的でないこと)
手続が相当であること(労働組合との間で協議・説明義務があるときはそれを実施すること
厳しいよ
僕は倒産による解雇を一度経験していますが、これは会社が倒産したことによるものなので上記の条件とは異なるものでした。
僕が人事を経験した15年の中で、試用期間中に解雇された人は数人です。
そのため、試用期間でクビになる確率で言えば、多くても「10%」前後と言うことができます。
そもそもの話ですが多大な労力をかけて採用した人材を、早々に見切ることなどほとんどの会社では行われません。
試用期間でクビになる理由
通常の解雇は前述の通り厳しいものがあります。
一方で、試用期間中であれば一定の基準を満たせば、解雇を行うことが可能になります。
試用期間で解雇になることを「本採用拒否」といいます。
本採用拒否とは、試用期間が終了する時点で社員としない決定を下すことです。
引用:マネーフォワード|試用期間中に解雇はできる?不当解雇になるのかを解説
解雇になる可能性がある代表的な項目です
能力不足
経歴詐称
勤務態度
1つずつ説明します。
能力不足
試用期間中に与えられた業務をこなすことができない場合は、この「能力不足」に該当します。
ただしよほど雑な面接でもない限り、実務がまったくできなかったということは経験上少ないです。
どちらかというと、採用する会社側が採用経験がなく適当に採用してミスマッチを起こしてしまうケースを多くみてきました。
能力不足が起こり得るケースとしては、求職者が面接で背伸びをしたりする場合です。
面接では採用されたいあまり、自分の経験を「盛って」話すケースがあります。
正直僕はおすすめしません。
その結果採用されたとしても苦しい思いをするのは自分だからです。
業務に耐えられないほど能力がなければ、試用期間でクビになる可能性はあります。
経歴詐称
経歴を偽って入社した場合は問答無用でクビになります。
なぜなら本当の経歴を知っていれば会社は採用しなかったかもしれないからです。
僕が見てきた経歴詐称には、学歴や職歴などさまざまなケースがあります。
求職者は「大丈夫だろう」と思っていても、会社や人事は調べる手段があります。
特に最近では「リファレンスチェック」というものを採用する会社も増えています。
リファレンスチェックは、書類選考や面接だけでは分からない候補者の経歴や実績に関する情報を、候補者の上司や同僚といった一緒に働いた経験のある第三者から取得することができるサービスです。
引用:backcheck|リファレンスチェックとは?
こういったリファレンスチェックサービスを使っていない会社でも調べる手段はあるので経歴は正しく伝えることをおすすめします。
勤務態度
よっぽどのことがないと勤務態度でクビになってしまうことはありません。
問題視されるのは以下のようなものです
注意されたのに毎日遅刻する
無断で休んでしまう
チームで仕事をしているが協力できない
ビジネスマナーレベルの行動ができないのであれば、仕事を任せることはできません。
当然、信頼関係は築くことができないので、会社としてはクビにする理由として十分と言えるのです。
一応補足しておくと、1度や2度の遅刻や欠勤ではそのかぎりではありません。
試用期間のクビが不当になる場合
試用期間でクビになる可能性をお伝えしましたが、どれもよっぽどのことがないと会社はクビにできません。
そのため、試用期間だからという理由だけでクビを受け入れる必要はありません。
試用期間のクビが不当な場合もあるので、よく理解しておきましょう。
不当だと感じる理由でクビになってしまった場合は、「解雇理由証明書」を請求するべきです。
解雇理由証明書には解雇される理由が記述されていますので、不当解雇の証明になる可能性があります。
不当解雇になり得るケースです
育成する努力をせずに解雇
結果だけによる判断
1つずつ説明します。
指導する努力をせずに解雇
会社は人材がミスマッチだった場合でも、すぐに解雇することはできず指導をする必要があります。
十分に指導したにもかかわらず、改善する見込みがない場合は解雇されても仕方がありません。
一方で採用後能力に問題があるということに気づいたにもかかわらず、指導もせず一方的に解雇することはできないのです。
結果だけによる判断
仕事の結果は従業員1人だけのものではありません。
社内の関係者や、市場の影響などあらゆる条件が結果に影響しています。
そのため、仮に営業職の人が試用期間中の営業成績が悪かったとしてもそれは、その人だけの問題とは言い切れません。
また入社したばかりだと、環境にも慣れず思うようなパフォーマンスを発揮することができません。
そのため、試用期間中に結果が出ないからといって簡単に解雇することはできないのです。
試用期間でクビはよっぽどのこと
ここまでは試用期間でクビになる確率についてお伝えしました。
よっぽどのことがない限りクビになることはありません。
ここからはなぜそんなに簡単にクビにならないのか、という点をお伝えします。
採用後入社するまでの労力
人事から見た試用期間の扱い
数ヶ月で人材を見極めることは難しい
採用後入社するまでの労力
僕は人事として採用をずっと経験してきました。
採用業務は職種でいうと「営業職」に近く数字に厳しい世界です。
採用目標があり、その目標を達成するためにありとあらゆる施策を打っていく必要があります。
厳しい世界
採用基準が厳しいとつらいよ
リクルート社の調べでは、「約79%」もの会社が採用で充足できなかったと言っています。
転職があたりまえの時代になったとはいえ、求職者の数が足りていないのが実態です。
また、採用業務は1名採用するまでの道のりが長く大変。
求職者から見ると、良い人と面接して内定を出せばよいくらいに感じるかもしれませんが、そんなことはありません。
会社としては、数多くの会社の中から自社を選んで応募してもらわなければならないのです。
それはある意味無数にある「家電商品」の中から、自社の「家電商品」を選んでもらうようなものです。
まず知ってもらうことから始めなければなりません。
大変だ
こういった活動は細かくいうと「採用広報」と言ったりしますが、ようは採用は簡単ではないということが言いたいのです。
そして採用プロセスを見てもらったらわかるように、各フェーズごとに「不合格」や「辞退」という離脱が発生します。
会社と求職者が相思相愛で内定までたどり着ける確率は本当に数%です。
リクルート社の調べによれば、中途採用1人あたりの採用単価は「約103万円」です。
先に紹介した「就職白書2020」では、中途採用に関するコストについても調査しています。その調査によれば、2019年度の中途採用1人当たりの平均採用コストは103万3,000円でした。
引用:リクルート|採用コストの平均とは?新卒・中途の一人当たりの金額と削減方法を紹介
実際には人材エージェントを使うことが多いので、100万円から200万円というところが採用するために必要なコストと言えます。
とても高い…
そうです。採用はとても高い投資であることは事実です。
少なくとも100万円はかかっていますし、入社後のコストなども考えると試用期間だけでも数100万円は発生します。
何が言いたいかというと、これだけ労力とお金をかけている新人を「見極めて」辞めさせるつもりはないということ。
大量採用が実現できている会社はその限りではありませんが、現実的には辞めさせるつもりで採用している会社は限りなく少ないです。
人事から見た試用期間の扱い
ドラマなどの影響で、人事には「こわい」というイメージがあります。
そして試用期間の判断をするのも、上司と人事というような偏見もあると感じています。
僕はそういった「人事に対する偏見」を受けながら、やりにくさの中で仕事をしてきました。
ただ実際は、人事に「人事権(人に関する権限)」がある会社は一部です。
そうなの?
現場が管理しているよ
何が言いたいかというと、僕の経験上は試用期間を見極めるのは人事ではないケースがほとんどです。
よっぽどのことがあったら現場の上長から人事に相談がいく程度の立ち位置で、決して何か指導するような立場ではありません。
前述もした通り、人事としては無事に採用ができてホッとしているのが試用期間あたりです。
そんな時にわざわざあらさがしをして、新入社員を追い出そうとするわけがありません。
仮にですが、新入社員を試用期間で見極めてクビにすることができたとしても、人事に対して責任が追求されます。
採用基準の見直し
面接担当の変更
入社後のフォロー体制
ざっと書き出しても、人事部にこのくらいの指摘が入ることは容易に想像できます。
そのため、人事としての試用期間は自分たちが試されているのと同じ感覚で見守ることになるのです。
なるほど
しいて言うのであれば、ふだんの行いに問題がないかどうかや、職場にうまく馴染めているかというところは見ることがあります。
基本的に試用期間で良し悪しを判断するのは現場であり、人事はあなたに近い立場で試用期間を過ごしていると考えてください。
そうすると見方が増えたような感覚になり、少し気持ちが落ち着くはずです。
数ヶ月で人材を見極めることは難しい
最後に現場目線で試用期間のお話をします。
僕も管理職として最大で50名ほどの組織のマネージャーだった経験があり、新人を何人も受け入れたことがあります。
実際に受け入れる現場では、どのように試用期間を扱っているか僕の経験を参考にしてください。
上司目線だ
あまり新人に目を向けられなかった
当時の僕の職場は営業会社で、毎月のように「営業の新人」が入ってくる環境でした。
なかなか一人ひとりを覚えることはできないのが正直なところでした。
そのため、試用期間中に「見極めてやろう」というような感覚はなく、育成期間くらいの認識しかなかったです。
仕事で成果が出せるようになるまでには、それなりに時間がかかります。
それはどんな職場でも同じ。
試用期間中に「結果のみ」でクビという判断をすることが、不当解雇になる理由がまさにそれです。
試用期間で成果を出せるのはたまたまか、そもそも仕事の難易度が低いかです。
そうなんだ
少し話がそれますが、人事評価は不満足度が常に1位の人事制度です。
なぜなら人が評価することはできないし、明確な理由で点数をつけることはできないから。
ライボ社の調べでは人事評価に不満を持つ人は「70%」を超えることがわかっています。
ましてや試用期間といった成長していく過程で、「できる」か「できない」かの判断はさらに難しいものです。
正しく評価できないよ
僕の経験から言うと、仕事や職場にしっかりと慣れるためには1年程度は必要だと感じます。
一般的な試用期間である3ヶ月程度では、「通勤に慣れた」くらいのものです。
もしも試用期間で見極めたり、解雇になるような職場であった場合、そもそも「ブラック企業」の可能性が高いです。
人材を育成しようとせず、使い捨てのように扱うようなことは一般的な会社はしないからです。
実際にはクビになるようなケースはほとんどありません。
ただ、仮に試用期間でクビの可能性があるのであれば、会社に見切りをつける1つの判断基準にしてもいいかもしれません。
試用期間でクビになる前兆はあるのか
ここまでは、試用期間でクビになる確率についてまとめてきました。
結論として、試用期間は会社として「念の為」に設けている期間です。
試用期間を「最終関門」のように重く捉える必要はありません。
一方でクビになる確率がゼロかと言われると、そうではありません。
クビになってしまう前にはどんな前兆があるか、経験談を交えてお伝えします。
面談や業務の進捗確認が増える
明らかに業務ができず指摘が増える
退職勧奨は実はそこまで難しくない
面談や業務の進捗確認が増える
僕は人事の仕事として、結果がでない人(ローパフォーマー)のサポートをすることがあります。
正社員として正式に雇用されたあとでも対応することはあるので、試用期間に限った話ではありません。
どんな職場にも「結果が出ない人」は一定数いますが、会社としては無視できません。
現場や人事など使える人材を使って軌道に乗せようとします。
サポートしていく
これが結構難しい
このサポートはある意味で、試用期間中の「不当解雇」にあたる、十分に指導していないことを回避できます。
日々の面談記録や、進捗の管理など本来であれば自分でやるべきことを記録していくからです。
誰かのサポートを受けている状態が続く場合は、早めに自立できるように依存しないことが重要です。
たしかに
たまにですが、業務のサポートをしているとサポートを受けることが「あたりまえ」のように勘違いする人もいます。
そのような勘違いをしてしまうと、自立するタイミングが遅くなります。
猶予期間ともいえるサポート期間を無駄にしないように、アドバイスを聞き改善していくことが必要です。
誰からもサポートされず、仕事を「任せてもらえる」状態を目指していきましょう。
明らかに業務ができず指摘が増える
日常の業務において、かなりの頻度で指摘を受けてしまうのはミスマッチが起きている可能性があります。
ミスマッチとは仕事の内容と、本人の能力が見合っていない場合などを言います。
特にビジネスの世界では採用の文脈で、企業の要求や期待と候補者のスキル、経験、価値観などが合わないことを指して使われることが一般的です。
引用:backcheck|ミスマッチとは
そもそもミスマッチが起きてしまう状況は、会社と個人双方に問題があります。
個人は採用面接の際に背伸びをし、会社はよく面接で見ずに採用しているような場合にミスマッチが起きます。
そのため、仕事ができず指摘を受けてしまう場合は、少し立ち止まって考えてみる必要があるのです。
仕事できない
そんなことはないよ
入社した後に「ミスマッチ」を実感してしまった場合は、できる限り改善の努力をしましょう。
僕もそうでしたが、営業職に転職した際は悲しいくらいのミスマッチを感じました。
ミスマッチをしているので、指摘を受ける日々が続き結果も出ません。
つらかったよ
しかし、他に行くところもなく仕方なくその職場で改善するように努力しました。
業務ができるようになるまでの道のりは長かったですが、結果的に「できないこと」ができるようになったのです。
おかげで僕は人事でありながら、営業を経験した特殊な経歴で市場価値を上げることができました。
もちろんミスマッチしている職場であれば、退職してもよいと思いますが、成長するための機会としてもよいのです。
退職勧奨は実はそこまで難しくない
ここまでお伝えしたように、「クビを言い渡される」というようなことは現実には起こりにくいです。
よくクビになることを「肩を叩かれる」と言いますが、会社はよっぽどのことがなければ肩を叩けません。
そもそも会社は労働基準法に、ガチガチに守られた従業員に対しては弱い立場だからです。
一方で退職勧奨という退職を勧めることは、会社としては行うことができます。
退職勧奨とは、会社から従業員に退職を促し、従業員に退職について同意してもらい、退職届を提出して退職してもらうことを目指す会社からの説得活動をいいます。
引用:咲くやこの花法律事務所|退職勧奨(退職勧告)とは?適法な進め方や言い方・注意点を弁護士が解説
実際に解雇はしないので、法的な問題にはなりにくいとされています。
こわすぎる
僕はあまり見たことはないよ
ただしメンタル不調のある従業員に対しては、その限りではありません。
例えば営業成績が悪い人に対して、退職勧奨を行うことは違法ではないという判例もあります。
長期間にわたり全く業績のない従業員に対して、業績を上げるよう叱咤したり、退職を勧奨したりすることは企業として当然のことであり、それ自体は何の問題もない。
引用:咲くやこの花法律事務所|退職勧奨(退職勧告)とは?適法な進め方や言い方・注意点を弁護士が解説
試用期間でクビにならなくても、在職中に成果がなかなか出せない場合は退職勧奨される可能性はゼロではないのです。
退職勧奨自体に圧力があるので、言われた場合は居心地がとても悪くなってしまいます。
パワハラ型と言われるような退職勧奨を受けた場合は違法となる可能性もあります。
その場合は労基署などの適切な機関に相談することをおすすめします。
試用期間でクビにならないために
ここまではクビになる前兆という点をまとめました。
クビの前兆は指導が増えることくらいですが、何度もお伝えしているように可能性は低いです。
そうは言っても試用期間でクビになってしまったら、つらい思いをしてしまいます。
ここからは最後に可能な限りリスクを下げる方法をお伝えします。
大きなトラブルを避け業務に集中する
試用期間が契約社員の採用は避ける
入社前に会社の実態を把握する
大きなトラブルを避け業務に集中する
トラブルを起こさないのが、試用期間の基本的な戦略です。
意外と入社したばかりのタイミングは、飲み会があったり仕事に慣れていなかったりとトラブルの火種は多いです。
大人しくしましょうということではないですが、悪目立ちしてもメリットはありません。
仕事に集中する
シンプルだけど重要だよ
たとえば飲み会に付き合って、翌日パフォーマンスがでないみたいなことは避けるべきです。
そうしたトラブルを避けるために入社した段階からキャラクターを作っておくと、無駄な付き合いを減らせます。
「1次会で必ず帰る人」のように理由や制限を伝えておくと、早く帰っても嫌な気持ちにさせずにすみます。
帰ろう
また、業務に集中するだけではやや不足しています。
僕がおすすめするのは、試用期間だけでも120%くらいの出力で頑張ることです。
なにも残業しなさいというわけではなく、業務時間内で自分が出せる出力の120%くらいのイメージで頑張ります。
新人を受け入れる側の上司は、「新人は頑張るもの」という期待のようなものがあります。
その期待に応えようとする姿勢を見せることで、上司の心証を良くすることができます。
「試用期間だけ」という気持ちで出力を上げて頑張れば、数ヶ月の間に慣れて仕事ができるようになるはずです。
試用期間がんばった副産物として、「自分の上限」を少しだけ上げることができるのでおすすめです。
試用期間が契約社員の採用は避ける
あまり多くはありませんが、試用期間中の雇用形態が「契約社員」となっているケースがあります。
契約社員とは有期雇用契約であり、雇止めというかたちで雇用契約を終了させられるリスクがあります。
有期労働契約を採用当初に導入し、試用期間の代替にする企業は増えつつあるようです。
引用:エンジャパン|試用期間中の契約形態は3ヶ月間の契約社員というかたちは問題ないですか?
試用期間のかわりに「契約社員」という、有期雇用契約を使うグレーな手法です。
あまり雇用形態にくわしくない求職者などは、リスクを知らずに入社してしまうこともあります。
すごく危険
完全に会社都合だよ
契約社員という雇用形態は、会社の都合で存在するものです。
解雇が厳しく制限されている正社員のかわりに、契約期間で雇止めができる契約社員を採用するのです。
詳細は「契約社員になってはいけない」という記事に書いたので参考にしてください。
本当にリスクがあるよ
そもそも求職者側に「雇止め」という大きなリスクを課している状態です。
人材に対して「使えなければ切り捨て」といった考え方が見え隠れします。
そのため、前提として試用期間中の雇用形態が契約社員という扱いの会社には応募しないということが重要です。
入社前に会社の実態を把握する
会社のことをしっかり調べることが転職においては重要です。
事前に調べる方法としては「口コミ」が有効です。
試用期間でクビにするような会社は、退職者の口コミが残っている確率が高いからです。
実際に入社した後に問題に気づいても遅いですし、リスクが高いです。
後悔したくない
僕は必ず調べるようにしているよ
Yahoo!知恵袋には実際に試用期間でクビになったようなエントリーもあります。
試用期間でクビになりました。私の能力不足が原因です。仕事を探さなくてはならないのですが能力不足でクビになった場合は面接でなんと答えればいいんでしょうか?嘘をつかないほうが良いのは知っていますが能力不足でクビはイメージ悪いですよね…
引用:Yahoo!知恵袋|ユーザー投稿
他にも同じようなエントリーがありました。
試用期間でクビになります。試用期間は半年の有期雇用で、問題がなければ「更新する場合があり得る」だったのですが、私は問題があったらしく、任期満了、退職の運びとなりました。
引用:Yahoo!知恵袋|ユーザー投稿
これはさすがにきつい…
これはYahoo!知恵袋の質問ですが、前述したように契約社員だったケースなども実際の口コミには存在します。
できるだけ、口コミサイトやSNSなどを活用して調べておくことが重要です。
離職率が高い会社は従業員の不満も多く、退職の口コミ情報が多く残っている可能性があるからです。
加えて、SNSでも社名を調べておきましょう。
口コミサイトにはなかったのに、SNSでは不祥事やトラブルが報告されているケースもあります。
またできれば「経営者のSNS」も確認するべきです。発信の内容についてあなたが違和感を持ってしまうのであれば警戒すべきです。
まとめると以下になります
口コミで退職エントリーを調べる
SNSで会社の不祥事を調べる
SNSで経営者の発信を調べる
ぜひ後悔しないように事前に調べていきましょう。
試用期間についてよくある質問
- 基本的に遅刻欠席をせず、積極的に取り組んでいればクビになることはほぼないのでしょうか?
-
はい、基本的には試用期間でクビになる可能性は低いです。業務へまじめに取り組んでいれば問題ないと考えます。できれば、上司とコミュニケーションをとり、どんな行動や結果を期待されているか理解するようにしましょう。
- 試用期間のクビはどのくらいの確率でしょうか?
-
統計データがなく一概には言えませんが、僕の経験では多くても10%前後というところです。能力不足だけではなく、健康上の問題や、経歴の問題など状況によって様々です。
- 試用期間でクビになる場合って当日に言われるのでしょうか?
-
14日以内の場合は当日の可能性があります。一方で15日以上経過している場合は、解雇予告が必要となりますので、30日以上前に会社としてはクビを伝える必要があります。
試用期間のクビは怖いが確率は低い
最後までお読みいただきありがとうございました。
ありがとうございました!
うれしいです!
この記事でお伝えしてきたのは試用期間のクビについてでしたが、調査の結果確率は低いということがよくわかりました。
僕の経験からも試用期間でクビになるケースはほとんどなかったです。
なぜ低いのかというと、やはり採用には多大な労力がかかっているから。人を採用するということはそんなに簡単なものではありません。
あなたがもし採用され入社したのであれば、会社としてわざわざ採用の労力を水の泡にするようなことはしないのです。
もっと言えばクビにするつもりで採用するような会社は存在しません。
ただし、試用期間を「契約社員」にするような会社は、従業員にリスクを負わせており入社するべきではないと考えます。
試用期間は間違いなくお試しの期間ではありますが、労働基準法により簡単にはクビにできないようになっています。
そういった意味で二重にも三重にも、クビにできない要素がありますので不必要に心配しなくても大丈夫です。
ぜひ試用期間は慣れるための期間だと思って業務に集中していきましょう。
この記事があなたの役に立てていれば嬉しいです。