もうあの会社には行きたくないな…
退職したいけど言い出せない
退職って気まずいですよね。
僕も働いている中で1番ストレスを感じるのは、辞めることを伝えるタイミングです。
辞めることを伝えるのは心理的に負担が大きくて、言い出しにくいというのが原因です。
僕は8回もの転職を経験しているので、退職を言い出すつらさがよくわかります。
どんな会社でも言い出しにくかった
そんな言い出しにくい退職を代わりに対応してくれるのが「退職代行」というサービスです。
ただ、比較的新しいサービスということもあり、退職代行を使うと頭がおかしいと思われることも。
記事の結論を先にお伝えすると、退職代行を使うことは頭がおかしいわけではないということです。
- 退職代行は合法であり頭がおかしいわけではない
- 退職代行を使われる企業側に問題があることが多い
- 退職代行は原則として次の仕事を決めてから使う
違法のサービスではありません。
僕は人事としても15年の経験があるので、退職していった人たちを数多くみてきました。
さわやかに退職する人はごく一部。
多くの人が「気まずそうに」最後は会社を去っていきます。
この記事では、つらい退職の救世主になる可能性がある退職代行について、人事目線で深掘りしていきます。
最後まで読んでもらうことで、退職代行について理解が深まるとともに、いざとなったら1つの選択肢にできるはずです。
ぜひお付き合いください!
頭がおかしいと言われる「退職代行」とは
まずはじめに「退職代行」という、サービスについて全体像をお伝えします。
退職代行とはその名の通り、自分の代わりに退職の意思を企業に伝える代行サービスです。
退職代行の形態は3つあり、それぞれ代行の対応ができる範囲が異なります。
形態 | 退職代行サービス | 退職代行ユニオン | 弁護士法人 |
---|---|---|---|
運営 | 民間企業 | 労働組合 | 弁護士 |
退職意思を伝える | ◯ | ◯ | ◯ |
交渉 | − | ◯ | ◯ |
訴訟対応 | − | − | ◯ |
退職代行サービス
退職代行サービスは民間企業が運営しています。
費用は1万円程度からと比較的安価でサービスを利用ができますが、法的な対応ができません。
できることは「退職を伝えること」に限られるため、交渉が発生する可能性がある場合は労働組合や弁護士のサービスを利用したほうがよいです。
退職代行ユニオン
ユニオンとは、規模の小さい会社に勤めている人でも加入できる「労働組合」です。
大企業には労働組合が存在しており企業と交渉が可能ですが、中小企業は労働組合がなく立場の弱い個人は交渉することが難しいのです。
個人では会社という組織に対抗するには困難が伴いますが、労組に加入(組合を結成)することによって、話し合いに応じさせることができます。
引用:全労協全国一般東京労働組合|ひとりでも加入できる!仲間が増える!
労働組合の1つの役割として、企業との「団体交渉」というものがあります。
退職代行ユニオンはこの団体交渉権を行使して、企業と従業員の間に入って退職時の交渉などを行ってくれるのです。
そのため退職日の交渉や未払いの賃金などの交渉が可能です。
この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。
引用:労働組合法 | e-Gov法令検索
弁護士法人
退職が訴訟にまで発展する可能性がある場合は、「弁護士」が運営する退職代行サービスを利用する必要があります。
民間の退職代行や退職代行ユニオンでは、会社からの損害賠償請求などに対応ができないからです。
退職代行もなんか色々あるんだね
自分に合った形態を選ぶのが重要だよ
ここまでは、退職代行の形態をお伝えしました。
退職代行といってもひと括りにできるものではなく、運営元によって対応できる範囲などが異なることがわかったと思います。
一方で退職代行のサービスを展開する企業は増え続けており、現在は100社を超えると言われています。
退職代行のカオスマップを見ればその多さがよくわかります。
うおー!多すぎる…
退職代行は明らかに需要が高く、今後も市場規模は拡大していくと推測できます。
背景にあるのは、人手不足と昨今の若手世代ならではの価値観だ。この傾向は今後も続くことが見込まれている。
引用:HRpro|「退職代行サービス」の利用者増加の背景
なぜなら根本的に「企業」と「従業員」の関係は変わらないから。
- 辞めたくても言い出せない
- 忙しくて辞めさせてくれない
こういった状況をつくってしまう企業側にも責任はあるのです。
ある意味で「退職代行」は、時代が生んだサービスといえるかもしれません。
まとめると、退職代行は合法でありまったく問題のないサービスです。
使うことで「頭がおかしい」と一部から思われるかもしれませんが、それは企業側の立場や過去の価値観で考えているからです。
終身雇用ではなくなった現代において、企業は従業員を守ることはできなくなりました。
雇われている従業員側としては、自分の身は自分で守らなければなりません。
企業にどう思われようとも、効率よく退職して転職ができるのであれば、使う価値があるサービスだといえます。
頭おかしい・クズと言われる理由【企業目線】
ここからは退職代行を使うと、なぜ「頭がおかしい」や「クズ」と言われるのかお伝えします。
退職代行は「ニコイチ」が2017年にはじまり、市場が拡大し続けている新しいサービスです。
基本的に人は、新しいものや未知のものを警戒します。
昔からの価値観や常識などと照らし合わせて、批判するケースをまとめました。
- 一方的に辞めて非常識だと思うから
- 引き継ぎができず社内が混乱するから
- 嫌なことから逃げる癖がついてしまうから
一方的に辞めて非常識だと思うから
企業は退職代行を使って、一方的に辞める従業員を非難します。
交渉の余地もなく関係を断つ行為が、非常識に映るからです。
一般的に退職の手続きは、従業員側が「退職届」を上長や人事に提出することからはじまります。
おおまかな退職の流れは、以下のようになっています。
まず退職することを伝えるのが1番のハードルですが、その後も会社からの「退職慰留」などさまざまな対応が必要になります。
これが面倒なんだよね
そうだね、簡単には辞められないからね
退職慰留とは企業が、従業員の退職を止めることです。
なんとなく従業員への思いやりから、退職を止めてくれているように感じますが基本的に「会社側の都合」です。
- 会社の売上が下がる可能性がある
- 採用や育成のコストがかかる
- 専門性が高いと後任がいない
クライス&カンパニー社の調べでは約90%の人が、退職慰留を経験しています。
残念ながら、そのうち70%の人は気持ちが動いていません。
人事として100人以上の退職者を見送ってきた経験から言うと、退職を伝えるときはすでに手遅れです。
気持ちが固まったから言うのであって、慰留を期待しているわけではありません。
だってもう決めてるし
従業員からするとこの退職慰留は、正直めんどう以外の何ものでもありません。
むしろこの退職慰留があるから、言い出しにくいとさえ感じてしまいます。
しかし、企業側からするとコストをかけて採用と育成をした人材をみすみす手放したくはないのです。
別れ話をする恋人のように「悪かった」「そんなこと言わずに」と情に訴えかけずにはいられません。
そんな中、退職代行を使って交渉もさせてくれない従業員を、非常識だと考えてしまうのが企業の立場です。
引き継ぎができず社内が混乱するから
退職代行を使うと、ほぼ即日で退職の手続きが行われます。
そのため「明日から会社に行かなくていい」といった謳い文句の広告が多いです。
手続きや引き継ぎをする間もなく、1人の従業員がいなくなるので社内は多少混乱します。
辞めてもいいのかな
法律上は何も問題ないよ
退職する時は、就業規則に書かれていることに従うのがセオリーです。
しかし就業規則はあくまでも会社が決めたルールであり、実は「法的拘束力」はありません。
そのため最短であれば、退職を告げるのは「2週間前」でよいということになります。
- 民法:退職希望日の2週間前まで
- 就業規則:退職希望日の1ヶ月(2ヶ月)まで
企業の就業規則が1ヶ月から2ヶ月になっているのは引き継ぎを目的としているからです。
一般的には引き継ぎは以下のような流れになります。
- 担当業務のリストアップ
- 引き継ぎ資料・マニュアル作成
- 引き継ぎ担当に説明
どこに何があるかわからない状態で、人がいなくなるのが1番困るのは現場です。
そういった混乱を避けるためには、水面下で引き継ぎ資料をつくる必要があります。
ただ、ぶっちゃけで言うと「引き継ぎしてもらわないと困る」というのは、企業側の事情です。
引き継ぎをしなければならない、という法律はないのです。
退職時の引き継ぎについて定める法律はなく、したがって、労働者に引き継ぎをする「法律上」の義務はありません。
引用:BIZUBEN|退職時の引き継ぎは義務?引き継ぎを拒否して退職する社員への対応を解説
えーそうなんだ…
ちなみに退職代行を使って引き継ぎをしない方法は、「OITOMA」を運営する株式会社5coreによると以下の通りです。
【引き継ぎなしで退職できる理由】
引用:株式会社5core|退職代行を使えば引き継ぎは不要!引き継ぎで辞められる理由やリスクを解説
退職日まで有給休暇を利用するため
労働者の義務に引き継ぎが入っていないため
もし引き継ぎをしたくないという場合は、有給休暇を使うというのがポイントになるので、自分の有給休暇の残日数を確認しておきましょう。
ただし、悪質な場合などは損害賠償問題に発展する可能性があるので、代行業者とよく相談して進める必要があります。
嫌なことから逃げる癖がついてしまうから
社会で働くことはストレスとどう向き合うかということです。
僕は8回も転職をしているので、ありとあらゆるストレスと向き合ってきました。
人事という立場もあって、一般の人の何倍もストレスに晒されてきたと思います。
人事はストレス多いよ
大変そうだね…
嫌なことからは逃げ出したくなりますが、嫌なことがあるたびに逃げていては身が持ちません。
多くの社会人が、職場で日々嫌なことと向き合っているのが現実です。
しかし退職代行を使えば、そんな「嫌なこと」から開放されるので、現代の20代などの若者世代を中心に高い需要があることがわかっています。
ただグラフを見るとわかるように、40代以降の利用が少なくなっています。
僕も40代なのでよくわかりますが、退職代行のようなサービスがなかった時代を生き抜いてきた人たちの価値観は今の20代や30代とは異なります。
さすがに「石の上にも3年」というのはもう使われなくなりましたが、働くうえでは一定の我慢が必要だと考えているのです。
苦しい経験やつらい経験に耐えることで、社会人として成長していくと考えています。
正直、耐性は必要だと思っています
退職代行を使うと辞めるかどうかに悩むことなど、自分と向き合う時間がなくなる可能性があるのは事実です。
僕も経験があるのですが、交渉や退職時の人間関係など1つ1つが、その後の仕事観などに影響を与え成長につながっていきます。
しかし、退職代行を使ってしまえば、そういった苦しい状況をスキップすることになります。
会社の管理職を担っている40代や50代の価値観からすると、嫌なことから逃げる癖がついているように映ることも。
企業側の肩を持つつもりはありません。
ただこのように時代背景や年代によって、価値観が異なるので退職代行を使うと「非常識」だと思われてしまう可能性があるのです。
退職代行は危険?なりふり構わず使った方がいいケース【従業員目線】
ここまでは、退職代行を使うと「頭がおかしい」と思われる背景についてまとめてきました。
企業側の立場や、年代による価値観の違いが主な原因ということがわかりました。
ここからは従業員側の目線で「退職代行」を使ったほうがいいケースをお伝えします。
結論としては、企業は守ってくれないので、自分の身は自分で守る必要があるのです。
- 企業が退職をさせてくれない
- パワハラなどのハラスメントがある
- すでにメンタルにダメージを受けている
企業が退職をさせてくれない
そもそも従業員に寄り添っているような企業であれば、退職代行を使う必要はありません。
事情は様々ですが退職することになるのは、少なからず企業側に問題があります。
そういった問題がある企業は、退職時もスムーズにいかないことがほとんど。
退職しようとしたら引き止めが…
辞められると困るからね
退職届を出した途端に態度が変わってしまうのです。
これまで適当に扱っていたのに、辞めると言ったら優しくなったりすることがあります。
辞められると困るので、とにかく辞めさせないような行動をとるのです。
退職を慰留してくる理由は以下です。
- 同じポジションの採用が難しい
- 実は将来性を期待していた
正直なところ働いていると、本音で話せる機会がないのは従業員だけではなく企業側も同じ。
「辞める」ということを伝えて、はじめて本音でコミュニケーションしているようなものです。
いずれにしても辞められたくない企業は、引き止めようとします。
- 待遇を改善する打診
- 良心に訴えかける
- 期限の先延ばしや拒否
あらゆる手段で退職を止めようとするものの、基本的にはただ辞めさせたくないだけ。
残る人が忙しくなることがわかっているからです。
仮に従業員側が折れて企業に残ることにしたとしても、何かが変わるわけではありません。
態度は元に戻り、一度辞めると言った人間というレッテルが貼られることになるだけです。
僕もなかなか辞めさせてくれない企業を経験しましたが、本当にやりとりが面倒なだけでした。
長引いて消耗してしまいそうな場合は、割り切って退職代行を使うことをおすすめします。
パワハラなどのハラスメントがある
退職代行に頼った方がいいケースとしては、パワハラが横行しているようなブラック企業です。
ブラック企業は基本的に法律を守るという意識が低く、従業員の扱いもずさんです。
僕は8回の転職で数多くのブラック企業を経験してきました。
信じられないかもしれませんが、ブラック企業の経営者は従業員から搾取することしか考えていません。
怖すぎるんだけど
まだ存在する企業です
「あいつの人生つかってやる」と、社長が言っていたのには戦慄が走りました。
長時間労働の強要や暴言をきっかけに退社を決断したが、「辞める人には給与を払わない」とも言われ、交渉が困難だと感じて利用を決めた。
引用:時事通信社|「退職代行」の利用急増=新卒から70代まで、GW明けも?
ブラック企業は根本的に、人を大切にする意識がありません。
そのため退職時も理不尽に怒鳴られたりして、さらにストレスを抱えることに。
僕はブラック企業で働いていた時に、辞めることを上司に伝えたら「有給なんか使わせるか」と言われてショックを受けたことがあります。
これは本当です
さらに人事だったこともあり、「あいつが労基署に駆け込んだら面倒だ」と陰口まで言われていました。
残業代の未払いやパワハラなど様々な問題があったので、労基署に駆け込めばよかったと後悔しています。
こういった姿勢のブラック企業相手に退職交渉は難易度が高いのは事実です。
真面目に向き合って消耗する前に、退職代行を使うことをおすすめします。
すでにメンタルにダメージを受けている
メンタルにダメージを受けている場合は、その企業に長居することは危険です。
パワハラや人間関係、長時間労働といったストレスが原因の場合放置しても解決できないからです。
メンタルヘルス不調はあまく見てはいけません。
「メンタルヘルス不調」とは、厚生労働省の指針によると、「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの」を示しています。
引用:厚生労働省|メンタルヘルス不調関連
僕も経験したことがありますが、メンタルにダメージを受けている時の傾向は以下です。
- 何をやっても楽しくない
- 仕事に集中できない
- なぜか涙が出ることがある
なんか調子悪いなと思っていると、いつの間にかダメージが深くなることも。
いつも怒られる
自分のせいじゃないこともあるよ
上司に怒鳴られたり、お局おばさんに攻撃されたりするような人間関係に問題がある職場ではメンタルにダメージをうけやすいです。
ケアしてくれる人がいないので、「自分が悪い」と思い込んでしまうからです。
僕も実際2、3回は「うつ病」と同じ状態になったことがあります。
ストレスで一睡もできない日もあり、ウィスキーで強制的に睡眠をとるような時期もありました。
しんどかったです
転職活動や新しい職場を探すことは、とても大きなエネルギーが必要です。
シンプルに心身の状態がよくないと、いい転職活動ができません。
メンタルの不調は放置せずに、きついなと感じたら退職代行を検討することも選択肢としてはありです。
自分の身を守ることを最優先にして考えていきましょう。
退職代行を使うと恨まれる?企業や人事の視点
退職代行を使うと「恨まれるんじゃないか」と心配している人も多いです。
人事の立場から言うと恨まれるという事はないですが、使われた側はやはり心情的にはショックをうけるものです。
ここでは企業側の視点を人事である僕の立場からお伝えします。
- やはり使われたらショックを受ける
- バックレや飛ぶ(音信不通)よりはマシ
- 退職代行を使われる職場にも問題がある
やはり使われたらショックを受ける
人事としては退職代行を使われると、やはりショックを受けてしまいます。
人事は従業員が「顧客」といえる仕事です。
従業員がどうやったら働きやすいかなど、人材のパフォーマンスを上げて経営に貢献することが求められるからです。
特に採用を担当していると特別な感情があります。
募集から入社まで数多くの候補者の中から、入社してくれた人に対しては強い思い入れがあるものです。
仕事ではあるものの、入社者には感情移入してしまいます。
そういうものなの?
特に僕は応援したくなる人を採用してたからね
そんな中、現場で揉まれていつの間にか辞めてしまう人を何人も見送ってきました。
中でも退職代行を使われるケースは、恨むとかではなく本当に寂しい気持ちと申し訳ない気持ちになります。
人事と新入社員の接点は、基本的には最初と最後だけです。
在職中は現場のメンバーや、上長だけとコミュニケーションすることに。
本当は関わりたいんだけど…
アルバトロス社の調べでは、退職代行を使った人の約63%が半年以内に辞めています。
多くの場合は、リアリティショックを受けて誰にも相談できずに辞めているのです。
人事としては何も言われずに退職代行を使われると、無言の抗議を受けているような気持ちになるのです。
- 面接で聞いてたことと違う
- もう何も話す事はない
さらに退職代行の対応が悪いこともあるので、サービスそのものに対する印象は良くはありません。
有名どころの代行業者のうちの何社かとやりとりしたことがありますが、どこもあまりに非常識で礼儀を欠いた態度が目につきます。
引用:Yahoo!知恵袋
いまだに「退職代行は非常識だ」という、人事や管理職が多いのは現実です。
バックレや飛ぶ(音信不通)よりはマシ
人事を長年やっていると、人にまつわる色んなことを経験します。
「こんな人だったの?」と、びっくりするような行動をとるケースもあります。
特に人間性が出やすいのは、会社を辞める退職の時です。
退職代行を使われることにもびっくりしますが、それ以上に驚きを隠せないのが「音信不通」になること。
音信不通になった従業員の行動を、人事業界では「バックレ」や「飛ぶ」と表現することがあります。
正確には「無断退職」と言います。
やばいヤツだね
これが1番びっくりするよ
無断退職は辞めたのかどうかも判断がつきません。
しかも引き継ぎもないので、現場も人事も混乱してしまうのです。
僕が経験した中での最短記録は入社3日目。
入社の研修中に出社しなくなって、それ以降音信不通となりました。
ショックだったなー
無断退職は間違いなく非常識です。
場合によっては損害賠償が請求される可能性もあります。
そういった点では、退職手続きをきちんと終わらせられる退職代行はだいぶマシといえるのです。
また企業は採用する際に「リファレンスチェック」を行うことがあります。
リファレンスは「身元照会、信用照会」を意味する英語で、職務経歴書に書かれている内容に虚偽がないかどうか、応募者の信用を第三者に確認する手法です。
引用:HRpro|リファレンスチェック
前職を無断退職していることが発覚した場合、高い確率でお見送りになるでしょう。
このように身勝手な無断退職はリスクが高いのです。
退職代行を使われる職場にも問題がある
ここまで企業や人事の立場から、退職代行を使われることについてお話ししてきました。
確かに使われた側はショックを受けますが、自業自得ともいえます。
そもそもコミュニケーションが正常な企業では、退職代行は使われません。
職場が正常なら退職手続きもスムーズです
そういう会社がいいな!
僕が退職代行を経験したのは「ブラック企業」だけです。
ホワイト企業は、退職代行の存在すら知らないような状況です。
東京商工リサーチ社の調べでは、全体の約10%の企業が退職代行を使われた経験を持っています。
「退職代行」業者から退職手続きの要請を大企業の約2割(18.4%)、中小企業の8.3%が経験していることがわかった。全体では約1割の企業が経験しており、社員の退職代行の利用が広がっている。
引用:東京商工リサーチ|「退職代行」業者から連絡、大企業の約2割が経験 人材確保に「賃上げ」、「休日増」などで対抗
この記事でお伝えしているように、退職代行が使われるのは会社側に責任があることがほとんど。
話しにくい上司や、働きにくい職場環境が退職代行を使わせるのです。
「(従業員が)退職代行の利用に至らないために企業が日ごろからしておくべきこと」として、「意見を伝えやすい企業文化を作る」と書かれている。
引用:パーソル|【弁護士監修】もし退職代行から突然連絡が来たら?適切な対応方法と、企業が対応すべき7つのこと
もう顔も見たくない!
職場が正常な状態でも、退職については相談しにくいものです。
アシロ社の調べでは、退職を検討する際に「誰にも相談しない」が約37%と3分の1以上を占めます。
一般的に上司や人事は、相談相手にも選ばれません。
職場が正常でも相談しづらいのに、そこにパワハラや人間関係の問題が絡めば、余計に退職のハードルが高くなるのです。
退職代行をとやかく言う前に、退職の相談さえできない職場をつくってしまっている会社に大きな問題があるのです。
谷本氏は「使われたくない企業も増えているはず。それが抑止力になり、企業の体質改善につながればいい」と話した。
引用:時事通信社|「退職代行」の利用急増=新卒から70代まで、GW明けも?
僕が自分で辞めにくい会社を辞めた体験談
ここまでは企業側の視点をお伝えしました。
退職代行を使われるとショックを受けるのは事実ですが、そもそも使われる企業に問題があります。
さて、ここからは僕が過去に退職代行を使えばよかったと、後悔している経験をお伝えします。
ブラック企業での退職は本当に面倒だということをよく理解してもらえると思います。
- 辞めるまでに6ヶ月かかった
- 自分で言ってもひどい扱いを受けた
- 退職手続きはどの企業もストレスがある
辞めるまでに6ヶ月!セルフ退職代行を実践
まず前提としてお伝えしたいのが、このエピソードでお伝えするブラック企業は「超」がつくほどのひどい会社でした。
どれだけやばい職場か、先にお伝えしたいので特徴をまとめました。
- 恫喝や怒号が聞こえるオフィス
- 泣き出す従業員
- 離職率90%超え
もうおわかりかと思いますが、かなりのブラック企業です。
別の意味で人生が変わりました
怖すぎるんだけど…
パワハラが日常だったので、心理的に逃げ場のない本当にきつい職場でした。
僕はなんと、その会社で5年以上も人事として経験を積んだのです。
5年もいた理由は、ただ1つブラック企業から、脱却するための実力を身につけることだけでした。
5年もかかりましたが、おかげでどこでも働ける力は身についたと思います。
ようやく辞めることができる状態になったものの、上司が本当に怖くて言い出せませんでした。
もう本当に退職代行があったらと…
当時、退職代行があったら絶対に使っていました。
引き止められることというより5年間「従っているふり」をしていたので、上司は僕が辞めるなんて思ってもいないわけです。
だから言い出せなかったし、言ったらどうなるかわかりませんでした。
気分はDV被害を受けている配偶者といったところです。
結局僕は、強制的に退職できる方法を考え「セルフ退職代行」を実行することに。
退職代行がやっているように事務的な連絡のみで、交渉の余地を与えないメッセージをLINEで送りました。
当時は社内連絡は恐ろしいことに「LINE」でつながっていたのです。
この時調べまくって、「退職願」と「退職届」の違いを知りました。
簡単にいうと退職願いは相談する形になるので却下の可能性があるのです。
一方退職届は有無を言わさずに退職を通告します。
端的に文面の内容を書くと以下のような感じです。
- 退職願ではなく退職届であることで意思は固い
- 法律上2週間前にいえば伝えればよいので◯日で退職する
- なお交渉の余地はない
めちゃくちゃ突き放していますが、これを「鬼上司」に送るのです。怖すぎます。
いやー、ほんとうにどれだけ勇気と知恵を絞ったか
代行はしていませんが、やり口としてはまさにセルフ退職代行です。
辞めると決めて文面を送る手法にたどり着いたのに数ヶ月、法律を調べ上げて反論できない状態にする文面作成にかかったのは1ヶ月。
送信するタイミングを見計らうのに2ヶ月程度かかり、合計6ヶ月以上もかかった計算になります。
正直やめた後は縁を切ったので、退職代行があったらどれだけよかったかと思えるエピソードでした。
自分で言ってもひどい扱いを受けた
自分で退職代行のようなメッセージを送り、企業に交渉の余地を与えず退職日を決めた僕はとてもスッキリしていました。
実際次の職場の入社日も水面下で決めていましたし、引き継ぎに時間のかかる業務は時間をかけて他の人に渡していました。
さらにいうと引き継ぎのマニュアルもほぼ完璧に仕上げていました。
余念がない
5年も潜伏したからね
ただ、残念ながら勇気を振り絞って自分で言っても、結局はひどい目にあうことになります。
僕の場合、見事に関係が悪化しました。
態度が急変した上司や会社から、僕が受けた冷遇は以下のようなものでした。
- 有給は絶対に使わせないと言われる
- 上司のモラハラとパワハラが過激になる
- 在籍中なのに社内イベントに参加するなと言われる
なんだか今思い返しても腹立たしいほど身勝手な上司でした。
さっさと縁を切りたかったので有給はどうでもよかったのですが、パワハラやモラハラが酷くなったのはきつかったです。
あからさまに仲間外れにしたり、無視されるように。
一刻も早く辞めたいと思う一方で、辞める間際に現れる「人間の本性」を冷静に観察している自分もいました。
こうした僕の経験から言えることは、ブラック企業の人間は最後まで変わることはないということ。
多くのブラック企業は強烈なトップダウンと、過去の成功体験に縛られているので考え方を変えることができないのです。
これはもう絶対に変わらないです
そう思うと「どう思われるか」なんて、考えること自体無駄な時間だったなと振り返ると思います。
正直この世には関わるべきではない人間も多くいます。そういった人たちに転職で出会ってしまったら自分で対処するしかありません。
ただ退職代行という合法なサービスを使えば、瞬時に解決してもらえます。
そういう意味ではいいサービスだと本当に思います。
退職代行を使うのは「頭がおかしい」と言えてしまう人は、正常な職場しか経験していない恵まれた人たちが大半です。
僕たちのようにつらいブラック企業を経験している人からすると、「辞める手伝い」をしてくれる退職代行は最後の砦ともいえる存在です。
退職手続きはどの企業もストレスがある
ここまで、とあるブラック企業での経験をお話しましたが、結局退職をするというのはどこの会社でもストレスです。
僕は8回転職していますが、その回数分すべて「ストレス」を経験しています。
- 基本的に本当のことを言えない
- 言うタイミングがわからない
- 言った後の対応が面倒くさい
なんというか、ブラック企業ばかり経験してきたので「思いやりのある上司」などの経験がないのが悲しいところです。
退職する時は本音を話せるチャンスでもありますが、本音を話したところで意味はあまりありません。
なので僕は辞める時は適当に、お互いが傷つかないような事情をつくり伝えることにしています。
エン・ジャパン社の調べでは、43%が本当の理由を伝えていないことがわかります。
また、言うタイミングが難しいというのもストレスを感じる原因です。
単純に気まずいので言い出すタイミングがわかりません。
ぼくはタイミングを見計らいすぎて、初めての退職のときに「ちょっとお話が」と言った瞬間に「辞めるのか」と悟られてしまったことがあります。
あれは気まずかった…
いつ言えばいいかわからないんだよね
さらにいうと、引き止めや退職交渉などがあります。実は一度引き止められて残った経験もあります。
こちらもエン・ジャパン社の調べではスムーズに退職できた人は55%です。
半数近くが何らかの引き止めや引き継ぎで、時間がかかっていることがわかります。
このように、退職はほとんどの場合においてストレスを感じてしまうものでした。
特に転職活動は先に次の企業の入社日を決めることがセオリーなので、退職日をいつまでも決められないのは本当に不安です。
辞めるたびにこんなストレスを感じるのであれば、サクッと退職代行で手続きを済ませたほうが効率的にものごとを進められます。
退職代行を使って後悔しないための準備
ここまでは僕の経験をもとに、退職の面倒くささをお伝えしてきました。
ただ辞めるだけなのに、心身にかかるストレスは仕事以上のものがあります。
さて最後ですが、仮に退職代行を使った場合に後悔しない方法を人事目線でお伝えします。
退職代行を使うなら「立つ鳥後を濁さず」の精神でいきましょう。
- 引き継ぎの資料を準備する
- お世話になっていた人へのお礼
- 退職前に次の企業を探しておく
引き継ぎの資料などの準備する
退職代行を使えば辞められるのは事実です。
退職までの残りの期間は有休消化に充てることが多く、退職代行に申し込んだ後はもう仕事をしなくてもよくなります。
いいな僕も辞めたい
でも準備はしておこう
辞める時に特に長引いてしまうのが引き継ぎです。
引き継ぎをせずに辞めることができるのが、退職代行を使うメリットの1つ。
この記事でお伝えしたように、引き継ぎをしなければならないという義務はありません。
ただ、就業規則に記載があったり、明らかに企業に損害が出る場合などの例外はもちろんあります。
そういったトラブルを回避するためには、事前の準備として引き継ぎ資料作成などを水面下で終わらせておくことをおすすめします。
やっておきたいことは以下です。
- 就業規則の引き継ぎについての記載を確認する
- 自分の業務は終わらせておく
- 引き継ぎ資料を用意しておく
特に引継ぎ資料を用意しておけば、残された従業員もある程度把握することができ、大きな混乱は避けられます。
またどう考えても「自分がいなくなったら問題になる」ような、案件を抱えている状態では退職は難しい可能性も。
可能な限り自分の業務を完遂しておきましょう。
また交渉権がある退職代行であれば「引き継ぎなしの了承」という退職交渉も可能です。
民間企業は交渉権がないので注意しましょう
形態 | 退職の交渉 |
---|---|
民間企業 | ー |
労働組合 | ◯ |
弁護士 | ◯ |
どうしても引き継ぎはしたくないという場合には、交渉権を持つ退職代行を選びましょう。
お世話になっていた人へのお礼
嫌な会社にも1人か2人くらいは、いい人がいるものです。
僕もブラック企業の経験は長いですが、お世話になった人はいました。
退職代行を使ってサクッと辞めてしまうことはできますが、人としての礼儀としてお礼くらいは言いたいものです。
言わないとモヤっとするかも
ただ事前には言わない方がいいよ
僕も辞める時には、「実は辞めるんです」という感じで結構本音を伝えてお礼を言っていました。
自分が「いい人」と感じているほどなので、相手もこちらのことを気にかけてくれていることが多く心配してくれます。
最後に食事に連れて行ってくれたり、気を遣ってもらいました。
ただし、どれだけいい人であっても退職を伝えるのは、退職が決まってからにしましょう。
何らかの経路で辞めることが、事前に上司に伝わると面倒だからです。
そっかバレると面倒だね
辞めるかどうかは退職届を出すまでわかりません。
次が決まらずに残る可能性もあるからです。
ちなみに余談ですが、次の転職先を検討する際には「アルムナイ」がある企業を選択肢にいれるのもおすすめです。
アルムナイとは簡単にいうと「再雇用制度」です。
アルムナイがある職場は出戻りの実績がある、つまり円満退職が多い企業であることを意味します。
アルムナイはその企業で就労した経験があることから、「企業の文化や理念を理解している」「企業に対して一定の愛着や信頼を持っている」など、その他の集団とは異なる傾向を持っているのが最大の特徴です。
引用:パーソル|アルムナイの定義
いい人が多いホワイト企業であれば、アルムナイがあることもあります。
退職前に次の企業を探しておく
次の職場を見つけておくのは、転職活動におけるセオリーです。
退職代行を使って、サクッと辞めても次の職場がなければ本末転倒になってしまいます。
メンタルがダメージを受けていたり、緊急事態の場合には次が決まっていなくても仕方がないのですが、原則決めておきましょう。
次の職場がきまっていないリスクは以下です。
- 後先を考えない人として評価が下がる
- 転職がいつまでに決まるかわからない
- 空白期間(ブランク)が出来て一生残る
なんかヤバそうなんだけど
実際空白期間が1番リスクあるかなー
転職活動を甘くみてしまっていると、次の仕事が決まらないという事態になることも。
先に辞めてしまった場合、次の仕事が決まらないとその間すべて空白期間になります。
空白期間は評価が下がるポイントです。
働く意欲が低いのではないか
引用:リクルート|空白期間に対する企業の懸念
長期の空白期間でビジネス感覚が鈍り、即戦力となるか不安
転職先が決まらない何らかの理由があるのではないか
空白期間がやっかいなのは、転職活動において評価がさがるだけではありません。
履歴書に一生残ってしまうので、転職する度に「ツッコミ」が入る可能性があります。
僕自身は空白期間6ヶ月くらいあるのですが、そこは起業準備をしていたので特に問題視されません。
ただ毎回ツッコミが入ります
転職活動は3ヶ月から6ヶ月はかかるものです。
今すぐに辞めたいから退職代行を使うのではなく、次の職場を決めてからサクッと辞めるために使うようにしましょう。
退職代行によくある質問
退職代行は合法!辞めにくくてつらい職場から抜け出す切り札になる
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この記事をまとめます。
- 退職代行は合法であり頭がおかしいわけではない
- 退職代行を使われる企業側に問題があることが多い
- 退職代行は原則として次の仕事を決めてから使う
そもそもですが、退職代行が使われるのは、正常にコミュニケーションができていなかったり、人材の扱いがひどい企業に多いです。
アルバトロス社の調べでは何回も使われる業種は、人材派遣やコンビニであることがわかります。
一概に上記のような業種に問題があるということではないものの、何らかの傾向はあるということです。
僕たち求職者側ができる対策というのは、こういったブラック企業体質になりやすい仕事や職場をできるだけ避けていくことです。
ただ僕自身8回も転職していますが、やはり転職は入社するまでわからないのが現実です。
何回転職しても同じでした
もし残念なブラック企業に入社してしまった場合は、退職代行を検討してもよいと思います。
退職代行の質もピンキリではあるので、できるだけ口コミや評判のいい退職代行を選びましょう。
弁護士である竹内さんによる退職代行は、相談者の悩みや不安に、耳をじっくり傾けることから始まる。メールや電話一本で、「退職代行をお願いします」「承りました」というやりとりではない。
引用:DIAMOND|“代行”は、まずはじっくりと話を聞くことから始まる
辞める時の労力をお金に換算すれば数万円ではおさまりません。
その労力をアウトソーシングできると考えれば、効率的にものごとを進められるはずです。
この記事があなたの役に立っていれば嬉しいです。