・40代の転職は遅いんじゃないか……
・いつのまにか40代になってしまった
・40代の転職でみじめな思いをしたくない
今、こんな悩みを抱えていませんか。転職は慣れた環境から未知の環境に身を移すことになります。そのため不安は年齢に関わらずつきまとうものです。
40代の転職は募集しているポジションが管理職だったり、即戦力としての経験や実績を求められるため、難易度は高いという一般的なイメージもあります。
40代は転職した後も過去の経験や、価値観に引っ張られてしまうことが多いです。企業文化に馴染めず自らミスマッチを招いてしまうという悲劇も起こります。
私は15年間以上人事のプロとして、採用活動と人事制度設計(会社のルール作り)の経験を積んできました。そして、求職者としても7回の転職とミスマッチを経験してきました……。
そこでこの記事では、採用する側と採用される側のどちらも経験してきた、筆者独自の経験と調査に基づき40代の転職では何が起こるのかをまとめました。
この記事を読めば、40代の転職は何を意識して行動すればよいかリスクと機会がよくわかるようになります。
てっとりばやく転職の相談をしたい場合は、自分に合うエージェントに相談しましょう。
40代の転職で悩んでいる人はぜひ最後まで読んでみてください!
40代が転職するのはみじめではない!
40代には共通の悩みがあった!
実は40代を含む、中年と言われる世代には”中年の危機(ミッドライフクライシス)”や”人生の正午”という嫌な名称が存在します。誰もが経験する40代に中年の危機という名称がついている理由は、年齢を重ねることで起きる人生の変化の多さからです。
家庭や仕事、さらには自分自身に様々な変化が起きることにより、結果的に転職の悩みへとつながります。実は、転職相談を受けるキャリアコンサルティングの世界では、40代の転職相談にはこの中年の危機があるということを前提としています。
40代はこうした年代特有の変化に対応するため、今の仕事と向き合うことになるのです。
評価されて年収を上げたい
比較的多い転職理由として、今の待遇に不満を抱くことがあります。長年働いてきたにも関わらず昇給しない場合や、昇給してもごくわずか……というケースです。
「自分はもっと評価されるべき!」と考えているので、自己評価よりも会社からの評価が下回ると、不満が増えて転職を考えることになります。
自分が得たい経験が少ない
会社を選ぶ基準は、その会社でやりたいことがあるがどうかが重要重要になります。そもそも転職は希望を叶えるために行うものだからです。しかし、実際は説明されていた内容と異なっていたり、経営方針や事業構造が大きく変わってしまうことがあります。
説明不足や予期せぬ出来事でやりたかったことができなくなるというケースです。本来自分がありたい姿とギャップが生じているので、ありたい姿に近づくために成長を求めて転職を考えます。
一方経験を積むことで成長を遂げ、会社のステージと自身のレベルが合わなくなってしまったというケースも存在します。特に40代になるとあらゆる事態を経験している場合も多く、そつなく業務をこなせるようになります。
簡単に言うと慣れやマンネリ化を感じている状態です。転職の動機としては成長というより、新たな刺激を求める挑戦といったイメージが近いです。そのため転職市場ではポジティブに捉えられることが多いです。
期待する経験を得られない環境は、ビジネスパーソンにとっては大きなストレスになります。自分が何をしたいかという明確な動機があるため、比較的焦点を絞りやすく転職活動も行いやすいという特徴があります。
家族のための時間が必要になる
40代は前述した通り、中年の危機という段階に該当すると言われています。危機と呼ばれるほど大変な理由として子供が一人暮らしを始めて自立したり、親が高齢に近づき介護が必要になるといった家庭環境の変化が挙げられます。
子供が自立したからもう少し余裕のある仕事を探したり、親の介護のために時短制度や介護休暇が使いやすい会社を検討します。
特に親の介護が必要になったことで転職を検討する場合は、自分の希望を叶えるというよりは家庭環境の変化に合わせるために転職を検討します。ただし介護で時間や場所に制約がある場合は、希望条件を下げるなどある程度の妥協を求められることもあります。
健康に対する意識の変化
40代になると急に体力が低下します。加齢による自然な現象ではあるものの、筋肉量や骨密度が低下していくことで疲れやすくなったり身体の変化を感じやすくなるのです。
20代や30代であれば、仕事や私生活も多少無理ができていたことが急にできなくなります。また、体力の低下は、集中力の低下にもつながります。デスクワークでも夕方早い時間に集中力が切れることや、これまで起こさなかったようなミスを起こしてしまったりします。結果的に自信がなくなり、若いころと同じハードワークを求められる環境に限界を感じて転職を考えるようになります。
人員整理や定年への不安
会社や会社を取り巻く社会環境は常に変化しています。シビアですがその変化に対応出来ない会社は淘汰され、事業縮小や最悪の場合倒産します。
不運にも事業縮小によるリストラや、倒産といったアクシデントに見舞われた場合は本人が望む望まないに関わらず転職を余儀なくされることになるのです。
筆者も倒産を一度経験していますが、数百名の従業員全員が一瞬で無職になり当時は大混乱になったことを覚えています。
人間関係のトラブル
上司や部下によるハラスメントで精神的に耐えられなくなったり、人間関係が悪くなると会社に居づらくなります。こうした人間関係のトラブルは入社して間もなかったり、人事異動など環境変化によって起こる場合が多いです。
例えば新しい会社に入ったら上司が感情的になりやすい人物だと発覚したり、モンスター社員の部下や同僚がいると日常的にストレスを受けてしまうのです……。
ハラスメントや人間関係の問題解決が難しい場合は残念ながら転職をすることになります。これまで筆者もそうした経験を何度もしています。一番辛かったのは、転職先を紹介してくれた人物がいたのですが、その人は人格者で昔からの知り合いでだったこともありとても信頼してました。
しかし、実際は外面だけ良い人だったようで、入社後すぐに豹変して強烈なパワハラ上司だったことがわかりました。この時は人間不信になるほど、大きなショックを受けたことを今でも鮮明に覚えています。
40代の転職後でしんどいこと
正社員ではなくなった
40代で未経験の業種・職種に転職することを越境転職といいます。同職種間の転職と比較すると難易度が大きく上がります。また、職種による傾向があり、以下のような職種から越境転職をする傾向があります。
引用:「越境転職」とは?異業種・異職種転職が増加する理由とこれからのキャリア設計|リクナビNEXT
- 接客、販売業
- コールセンター
- オフィスワーク事務
越境転職は増加傾向にあります。その背景には少子高齢化や労働人口の減少に加えて、AIやDXといった技術の進化による事業構造の変化があらゆる業界で起きているからです。
そのような状況の中、人手不足を補うために異業種からでもポテンシャルのある人材を探すしかないということになります。ただし、40代の越境転職は簡単ではありません。なぜなら20代や30代が同じ未経験者としての競争相手になるからです。コストを下げたい企業としては、比較的年収が低く育てやすい若年者を採用しようとします。
越境転職には職種を変えたいと思うほど、今の仕事が合わないと感じる不安や不満があります。理由として多いのは体力的な不安や、職種で得られる経験の不安です。
今の仕事から得られる経験だけで、今後も安定した収入を得られるかがわからないとう不安を抱えています。そうした「このままで良いのかな……」という強い動機があるので、雇用形態の条件を契約社員やアルバイトなどに変更してでもキャリアの再スタートを試みます。
筆者はデザイナーから営業そして人事と越境転職を何度も経験しています。越境転職をする度にゼロから経験の積み上げ直しになるので、とても非効率なことをしていたように思います。越境転職や転職自体をせずに長く勤めていたほうが年収も高かったのかもしれません。それぞれの越境転職の理由はこちらです。
しかし、この越境転職をしてきたおかげで、非常に多くの経験を積むことができたのは事実です。同じ業種や職種に留まっていたらそうしたスキルアップの機会は限られていたと思います。
年収が下がった
40代で転職をして年収が下がることは少なくありません。経験に自信がなく内定の確率を上げるために、希望年収を低めに設定してしまうことや、市場価値よりも高い年収を貰っていたというケースがあります。
希望年収を相場より低く設定すると、採用する企業側としてはプラスの材料にはなります。その理由は、同ポジションで内定を出したい人物が複数いた場合に、少し上乗せをしたオファー金額を提示しやすいからです。
また、入社後活躍した場合は昇給可能な幅に余裕があったり、既存社員と報酬のバランスをとりやすいなどがあります。そのような理由から比較対象がいた場合、相対的に年収が低い人を選ぶ可能性が少し高くなります。
ただし、いくら低めに設定した年収が少しプラスに働くといっても、本人が納得いかなければ本末転倒になります。年収を下げてでもやりたい仕事であれば、選択肢として検討してもよいと思います。
ただし、一度下げた年収を再び上げることは簡単ではありません。次にまた転職をすることになった場合、苦労することになるので自信がないという理由で、安売りすることはあまりおすすめできません。
一方で、40代で市場価値より高い年収を貰っていた場合、転職時に年収が下がることがあります。背景には業界構造として原価がかからない高い利益率の企業体質だったり、市場を寡占している企業に在籍していた場合です。
このケースは年収と市場に大きくズレが生じている可能性があります。いざ転職しようとすると、あまりの高額報酬にオファーを出せる企業は少なく、結果的に相場に合わせて年収を減額する必要があります。
企業文化が合わない
企業文化とはその企業ならではの価値観に基づいた、行動する際の考え方やコミュニケーション方法などを指します。企業内の活動ほぼ全てを指すと言っても言い過ぎではありません。
40代でこの企業文化が合わない場合は、大きなストレスを感じる可能性が高く、長く勤めることは難しくなります。
多くの企業は存在意義を明確にするために、ミッション・ビジョン・バリューというものを定義します。ミッション・ビジョン・バリューはその企業の価値観や目指すものを言葉にしたものです。
企業はこのミッション・ビジョン・バリューを実現するために活動をします。掲げているだけで実態はまるで違う企業文化の場合も少なくはありません。ただ、実態が違う場合でも違うなりの企業文化は存在します。
どの企業のミッション・ビジョン・バリューが良いかといった判断基準はありません。どれも企業が自由に描くものなので、共感できるものを選ぶということが重要です。
よく見かけるのが、転職活動の時だけミッション・ビジョン・バリューを覚えて対策をする人がいます。しかし、このミッション・ビジョン・バリューがこそが考え方の軸となり、企業文化は出来ていきます。
ミッション・ビジョン・バリューは企業を知る上でとても重要です。こちらの例は有名企業のものです。
21世紀を代表する会社を創る。
引用:株式会社サイバーエージェント
クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。
引用;ソニー株式会社
世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。
引用:株式会社ZOZO
Be unique. Be equal.
企業理念やパーパスといった言葉でも、表現されることもありますが大まかな意味は同じです。企業が大事にする価値観が反映されています。
企業文化が合わないということは、価値観や目指す未来が合わないことと同じだと言えます。例えば「徹底的に顧客に尽くす」とビジョンを定義している場合を考えてみましょう。
「徹底的に顧客に尽くす」というビジョンを実現するために、社内では顧客のためにという考え方を徹底していて、ハードワークが当たり前。また、顧客のことを語り合う飲み会などウェットなコミュニケーションが頻繁に起こります。
大まかですが、どんな職場かはイメージがしやすいと思います。
例の様な企業が悪いという話ではなく、考え方が自分自身と合うかということが焦点になります。顧客満足を追及したいと考える人が顧客を軽視する企業に入ってしまった場合、考え方や企業文化はミスマッチを起こすことは明らかです。
業務を一から覚えなくてはならない
転職すると新しい職場で業務を一から覚える必要があります。特に40代で中途入社すると手厚い研修は望めません。ある程度即戦力として手がかからないことを前提に採用をされているからです。自分で情報を集めたりマニュアルがない中で、社内の有識者を探して業務をキャッチアップしていくことが求められます。
同職種の転職であれば、新しい職場に多くの経験を持ち運ぶことが可能です。業務のキャッチアップも早く、期待に応えられる可能性は高いです。しかし未経験の職種にチャレンジする越境転職の場合は違います。過去の経験に頼れる範囲は極端に少なくなり、慣れない企業文化の中、業務を一から覚えなくてはなりません。また、知識不足の状態なのでプライベートでもインプットする必要があります。
筆者の経験でも、やはり未経験の職種に転職した場合にとても苦労しました。転職先はスタートアップ企業が大半だったので、マニュアルも整備されておらず有識者も誰かわからないという状況です。しかも試用期間で成果を出せずに解雇されたらどうしようという不安もありました。強い不安の中、150%位に出力を上げることで、業務を覚えてなんとか乗り越えることができました。
社長や上司と相性が合わない
社長や上司との関係は、仕事をする上で影響が大きく無視することはできません。仕事の報告や連絡というレポートラインだったり、自分の仕事ぶりを見て評価する人物でもあるからです。社長や上司から理不尽な要求をされたり、気に入らないことがあると感情的になるといった、相性が合わない要素は複数出てくる可能性があります。
上司が合わないということであれば、部署移動や上司が異動するなど少し気長に変化を待つことも可能です。しかし社長の場合はいなくなることを期待することが出来ません。社長から理不尽な要求やハラスメントなど日常的に耐えられないストレスを受ける場合は転職を検討することになります。
どのようなスタイルで仕事をしたいかという話になりますが、経営に近いところで仕事をしたいと考える場合は社長との相性問題による転職リスクは高くなります。逆に経営との近さにこだわらない場合は、仕事をする環境は大企業などでもよくなります。大企業であれば人数が多く、組織の階層が深いので社長との距離も遠く気になりません。
筆者は社長と上司の相性問題のどちらも経験しました。いずれも職場内での解決は難しく転職する選択肢を選ぶことになりました。社長と上司の相性問題は、企業文化の相性とも関係していて、いずれも入社前に見抜くことが難しいと感じます。入社前でもある程度事前に見立てることは出来ますが、必ず何か想定していなかった要素は出てくるものです。
事業縮小など将来が不安になる
経営は生き物と言われるほど変化するもので、そのため外部環境の影響で事業が変わるということはよく起こります。企業は不安定な環境の中で、将来を予測しながら生き抜いていく必要があるのです。将来の成果を得るべく事業を育てたり、撤退したりするという選択肢が経営者の頭の中には常にあります。
企業の根幹となる主力事業は、よほど環境の変化が起こらない限り撤退することはありません。しかし立ち上がったばかりの新規事業は撤退のリスクを孕んでいます。損をしてでも事業を育てるか、目先の利益を重視して儲からないと思ったらすぐに撤退するかは経営者のさじ加減次第になります。
もし新規事業を魅力に感じ、転職する場合は事業縮小や撤退のリスクを含めて検討する必要があります。入社前の市場調査や、経営方針について調べることが出来れば、ある程度の見立ては可能になります。特に将来を予測する上で、市場調査は大きく役立ちます。
例えば葬儀業界の市場調査をすると、高齢化により死者数が年々増加している背景があります。人口減少と連動して市場が成長し続けると見立てることが可能です。逆に出生率の低下傾向を見てみると、今後生まれてくる子供だけを対象にするビジネスは市場そのものが縮小し続けると言えます。
このように自分が選ぼうとしている企業と外部環境を知ることで、リスクを回避することが出来るようになります。
40代が転職してよかったと感じたこと
不満が解消されストレスが減った
転職の背景にはほとんどの場合、職場への不満があります。不満の種類は人間関係から、評価や待遇と多岐にわたります。このような仕事をする上での不満や、ある意味ストレスを減らすことが出来たら転職は成功と言えます。
転職で全て解決するかと言われたらそれは違います。しかし、転職すると過去のしがらみから解放され、これまで培った経験をもとに周囲との関係を再構築できるのは事実です。ゲームで例えると、強くてニューゲームの状態です。
強くてニューゲーム(つよくてニューゲーム)とは、コンピュータゲーム(主にロールプレイングゲーム)のシステムの一つであり、ゲームをクリアしたあとにクリア時点のステータスや所持アイテム等を引き継いで最初からプレイできるシステムのことである。
引用:Wikipedia
40代までの失敗を糧にすることで、自分にとってストレスの少ない環境を構築することができます。筆者は良くも悪くも、ごく一部を除いて過去に在籍していた企業や従業員との関係は全て断つことで環境を初期化しています。
これは筆者の経験ですが、転職すると正直前職が恋しくなることがあります。不思議ですがどんなに嫌いな会社でもこうした感情は生まれます。
前職は慣れ親しんだ地元のような存在で、在職中には当たり前過ぎて気付くことが出来なかったありがたみを感じるからです。離れることで初めて感じる寂しさなど、当然といえば当然の感情だと考えます。そして転職後に前職の環境が好転して後悔する場面もありました。
また、前職の仲間のほうが関係が深いので、いつまでも飲みに誘われたり交友関係が続くことも多いです。このような状況が続くと、新しい環境に切り替えができず馴染むための時間がかかります。筆者はこうした、もし転職しなかったらという後悔は無駄だと考えているので、余計な情報が入らないように関係を断ち切り新しい環境に専念できるようにしています。
役職がついて仕事がしやすくなった
40代のミドルクラス以上に求められるポジションは管理職も少なくありません。そのようなポジションに転職すると役職がついて権限が増えます。なかなか評価をされにくい環境で努力するよりも、自分が評価される企業を選ぶことであっさり待遇が変わることがあります。
一般社員のようなプレイヤーとしての仕事と、管理職としてのマネジメントの仕事では役割が大きく異なります。管理職は権限の範囲であれば、自ら考えて物事を動かすことが出来るようになるのです。
役職を持つと自分の仕事だけではなく、メンバーが仕事をスムーズに進められているか等の進捗管理も求められるようになります。このように権限とともに仕事の難易度も上がりますが、自分で仕組みを考えたり自由度が高くなることで仕事がしやすくなります。
年収が上がった
年収は仕事の対価として重要な意味を持ちます。転職時の変化としても、キャリアやスキルが評価されたという実感を得やすいの明確な指標になります。
企業側の目線でも、わざわざ転職して年収を下げたいと考えている人は少ないと考えています。面接で希望年収を確認されますが、自分の提供価値をしっかり伝えることができれば、現職を上回る希望年収を提示しても内定を貰うことは十分可能です。
また、40代になると年収を上げなければならない理由も増えてきます。自分だけではなく、家族のことも考えなければならないからです。子供の教育費や親の介護、さらには自分達の老後等、支出が増える要素を考えるときりがありません。
40代が年収を上げる意味として、現在の生活をより良いものにしていくことと同時に、将来の資金を準備していくということがあげられます。ただ貯金するだけではなく、余裕資金から投資に回したり、自身の学びに使うことで更に高い年収を目指すことを可能にします。
そう遠くない定年後を意識して、年収を上げていくことは本当に重要なことです。以下は40代の平均貯蓄額と定年後にかかる生活費です。
【40代の貯蓄額平均】
- 40代単身世帯:300万円
- 40代夫婦世帯:406万円
【夫婦世帯の定年後生活費試算】
引用:40代の貯金額はいくらが理想?老後に向けて資金計画を立てよう|りそなグループ
- 最低限の生活:6,630万円
- ゆとりのある生活:1億830万円
上記はあくまでも単純計算によるシミュレーションですが、少なくとも定年後に6,000万円から1億円が必要になることは予想出来ます。
インフレによる物価上昇が目立つ昨今ですが、今後日本円の価値が更に下がるという可能性もあります。あまり考えたくない未来ですが、こうした現実から目をそらさず、年収アップを狙う努力は今後ますます重要になります。
ただし、年収が上がらないことが転職失敗ということではありません。年収を一時的に下げてでも経験したい仕事で、多くの知見を得ることも出来ます。少し長い目線でキャリアを考えて、中長期的に年収を上げていくようなロードマップを描くことができれば問題ないです。
自分の市場価値を知ることができた
転職を少し乱暴に表現をすると、自分自身のキャリアを市場に出して、企業から値段をつけてもらうようなものです。キャリアに値段がつかなければ転職はできません。筆者も含め何度か転職を経験している人であれば、その都度市場からシビアなフィードバックを嫌でも受けるので自分の年収相場をよく理解しています。
40代で初めて転職したり、転職経験がほとんどないようなケースは、自分の価値を客観的に評価することは難しいです。自分の価値を知る機会が少なく認識がズレやすいため、自信満々に転職活動を始めて面接や書類選考で落ちてショックを受けるのです。
ただ、転職市場からの反応というシビアなフィードバックには大きな価値があります。自分に足りない能力や経験、仕事に対する考え方などの気付きになるからです。
また、好条件でスムーズに転職ができた場合も、自分が思っていたより評価されている能力や、経験に気づくことができます。企業からのスカウトメール数や内容、口説かれる時にどこを見て評価されているのかがわかります。
スキルを高めることができた
転職理由にスキルアップによる成長が出来る環境を選ぶ人は多いです。40代になると経験から仕事や環境に慣れます。そうすると特に大きなトラブルもなく、仕事を進めることが出来るようになるのです。結果的に出来ることが増えるといった成長を実感する機会が減り、成長への不安を感じるようになります。
事業が成長して大きくなればやることが増えて、仕事内容も変わるかもしれません。しかし転職により、事業規模の大きな企業を選べば、数年分のショートカットが出来ます。
そのまま居続けたら数年かかる変化を自分で起こすことも可能です。管理職ポストが埋まっている場合も同様です。転職で管理職ポストが空いている企業を選べば、仕事のステージを変えてスキルを高めることができます。
40代が転職を失敗すると悲惨と言われる理由
40代の転職は難しくチャレンジの難易度が高い
ここまで読んでいただいた読者の皆さんは、様々な理由から40代の転職は簡単ではないということが伝わっているのではないでしょうか。そこで、ここからは何を意識して動けば良いのか、もしくは動かないほうがいいのかについて改めて人事目線も加えてお話します。
まず前提として転職が難しいかどうかは、これまでとこれからのキャリアに一貫した想いやストーリーがあるかがポイントになります。
なんとなくの転職や仕事が嫌になっただけのキャリアチェンジは、採用する企業からはただ転職を繰り返すジョブホッパーとしてマイナスの評価を受けます。また未経験の職種であれば20代や30代の若年者と競争することになり不利になります。20代や30代のような感覚で、軽い気持ちで転職を考えることはリスクが高くおすすめできません。
また、そういう状況に陥らないようにするには、転職するか、しないかを考える前に自分のありたい姿という理想を整理する必要があるのです。
まずは自分が何を叶えたいのかということをゆっくり考え、どうすれば叶えられるのか手段を棚卸ししていきます。棚卸しをすると、自分でも気づいていない価値観に気付けたり、優先順位づけが少しずつ出来るようになります。
結局入社しないとわからない
入社しないとわからないという表現は、身も蓋もない表現ですが事実です。どれだけ転職の経験を積んだとしても、面接やウェブの情報は断片的でどこか偏っています。結局入社しない限り見えないものはとても多いのです。
さらに入社したい企業に対しては嫌な情報を見ようとしない、もしくは見てもあまり信じない傾向があります。これを確証バイアスと言い、自分にとって都合の良い情報しか受け取らなくなることを指します。この確証バイアスが働いていることに気づかず情報収集しているつもりになると、入社した後に痛い目にあうことになります。
また、こうした現実にぶつかりショックを受けることをリアリティショックと言います。
「リアリティショック(reality shock)」とは、その名の通り「現実に直面した際のショック」を意味しており、とくに新しい環境に身を置いた際に「実際の状況が思い描いていたものと違った」と感じた際のギャップに思い悩むことを指す言葉です。
引用:リアリティショック|人事の図書館
リアリティショックは新卒に多く、ミスマッチから早期離職の原因になることで人事業界では認知されています。そのため、新卒にはリアリティショックを起こさないように丁寧に説明する企業も少なくありません。
しかし40代となるとこのくらいわかっているだろうと、細かくは説明をされない場合があるということを認識しておく必要があります。自分で調べたり聞いたりしたことが全て正しいと思わないことや、何があるかわからないという心づもりで様々な可能性を想定することが重要になります。
それでもなんとか想定外の事態は回避したいという読者の皆さんに、少しだけリスクを下げる方法をご紹介します。それは面接の前の段階であるカジュアル面談で、気になる点を雑談交じりに確認しておくということです。
選考が進むと企業に対して興味が高くなり、入社したいという意欲も上がります。そうなると自分の評価を下げそうな質問はしなくなりますし、前述の確証バイアスが強化されるので情報がさらに偏るリスクがあります。
カジュアル面談前後であれば、対等に話せる上自分を飾らずに聞きたいことを聞けます。想定外を避けるには、内情をサラッと探ることが出来るカジュアル面談がおすすめです。
マネジメント経験を求められることが多い
40代に求められる役割として組織をマネジメントする管理職があります。多くの場合、企業が事業を成長させるためには、組織の規模を拡大することが求められます。組織は人数がいれば良いというものではなく、まとめ役の管理職がいなければ十分に機能することは出来ません。
基本的に管理職登用は、モチベーションとバランスを考えて既存社員から引き上げることを考えるケースが多いです。しかし急激な事業拡大に組織が追いつかない場合は、外部から管理職を採用する必要が出てくるのです。
そのためマネジメント経験を持っていれば、こうした求人にも応募することができるので、転職時に選択肢が増えて有利に進めることができます。
ただし、マネジメント経験をしているだけで合格するということはありません。マネジメント手法には様々なタイプがあり、企業側は企業文化や組織に対して、求職者の持つマネジメント経験が馴染むかどうかを面接で見極めています。
例えば皆で協議して決めるフラットな企業文化に対して、トップダウンのマネジメント手法で組織を動かしていたという経験はフィットしにくいと言えます。
一方マネジメント経験がない人もいますが、マネジメント経験を持っていないから管理職にはなれないということはありません。マネージャー候補といった求人は、最初からマネージャーではなく入社後に一定期間プレイヤーとして活躍を求められます。プレイヤーとして現場の経験を積んだ上で、周囲の理解を得てからマネージャーとして昇格するというものです。
外部から管理職を採用していきなり組織に入れることは、人間関係や社内のバランスを崩すリスクがあります。そうしたリスクを避けるために助走期間を設けているのです。
こうした管理職候補という求人の面接では、メンバーがついていく人柄か、指導できるくらいの経験や資質があるのかというポテンシャル部分をよく見ます。そのため管理職を経験していなくとも採用される可能性はあります。
チャレンジを避けると定年後にリスクが高まる
定年を40代で考えるとまだ先のことの様に感じますが、いつか定年を迎えることはビジネスパーソンにとって避けられない現実です。どんなに良い環境だとしても、会社が守ってくれるのは長くても定年までです。運よく60歳や65歳の定年まで勤めることができたとしても、少なくとも20年前後は定年後に生きることになります。
私たちが定年を迎える20年後は、年金だけで暮らすのは現実的ではなくなるでしょう。定年後は自分の力で収入を作っていくことは必然で、このような未来に備えるために今から出来る経験やスキルの底上げを考えて行動するべきだと筆者は考えます。
ここでも自分がどうありたいかという理想像が必要になります。もし転職する必要がない仕事に就けていたら幸運なことですが、会社の看板が外れた時にどうなるかを想像しておくことは大事です。
自分の名札だけで仕事をもらうことが出来るのか、それは今の仕事や経験の延長線上で可能な未来なのかをシミュレーションしていきましょう。
40代の転職で失敗して無職にならないために
後悔しないための覚悟が求められる
まず軽い気持ちで40代の転職はしないようにしましょう。ここまでにお伝えしたように、そもそも40代に求められる要件は多くなり転職の難易度が高くなるからです。
転職そのものも難しいといえますが、うまく転職できたとしても困難が去ったわけではありません。入社して数か月も経てば、上司の性格や社内の人間関係など、入社前には気づかなかった自分にとってのリスクが見えてきます。
もしかすると、前職以上のストレスを受ける可能性もゼロとは言えません。実際に筆者は残念ながら、そのような厳しい状況を何度も経験してきました。
そうした状況になると、転職は失敗だったのではないかと感じてしまうものです。確かにその辛い瞬間だけを、スナップショットとして捉えれば失敗に見えるかもしれません。
40代の転職には、その失敗を乗り越える覚悟が必要になります。また転職をするとしても、なぜその時にその選択をしたのかという問いに正直に答えにくくなります。
実は40代に求められる能力には、自分に降りかかる問題の解決ができるのかということはほとんどの場合に含まれていると考えてよいです。
転職に正解も不正解もありませんが、覚悟という意味では自分にとっての正解にしていく、という姿勢が重要だと筆者は考えます。トラブルに見舞われてその瞬間は失敗だったと感じたとしても、そのトラブルを糧に自分を成長させることができれば結果的に良いわけです。
転職する理由を明確にする
転職するには理由が必要です。当たり前のことを言っているように感じるかもしれませんが、当たり前過ぎてあまり考えることがないのではないでしょうか。
転職の理由が必要な背景には、まず採用する企業の立場があります。採用するにはその人がなぜ転職しようとしているのか、という理由が重要だからです
転職や退職理由はその人のキャラクターや価値観が、色濃く反映されるので面接官としては興味深く確認します。そうした理由から、転職する理由は明確にするということが求められます。
逆にありきたりな答えしか得られない、志望動機を聞く企業は減ってきたように感じます。筆者も面接官として聞くことはありません。
一方、求職者である自分にも、もちろん転職理由が必要です。次の職場で何を叶えたいかを明確にする必要があるからです。ですが、その転職理由は面接では率直に伝えることが出来ません。
なぜなら、本当のことを言うと企業から印象が悪くなり、採用されないのではないかという不安があるからです。そのため、ある程度本当のことを混ぜながら、体裁を整えた転職理由を述べていくことになるのです。
面接を受ける求職者は、どうしても自分の立場が弱く体裁を整えようとします。そして企業に対して出来るだけ良い印象を与えようと努力します。
採用する側の企業は、転職理由を軸に求職者のエピソードをつなげていくことで、求職者の輪郭をつくり理解を深めます。このように両者の間には微妙なズレが生じていくことになります。
本当の気持ちや転職理由を言うことは躊躇するかもしれません。しかし、面接で転職理由の体裁を整えてズレた内容を伝えると、入社後ずっとその理由に縛られて働くことになります。
また、企業も求職者もお互いを正しく理解していないので、どこかで無理が生じたり事前にミスマッチの要素に気づくことができません。
本当の転職理由を伝えることを躊躇するのは、自分に非があると感じる、言いにくくさせている理由がどこかに存在します。何が言いにくくさせているのかを言語化して整理していくことは、自分にとっての転職理由を明確にすることにつながっていきます。
大切なのは、整理して明確になった転職理由を細かく伝えるというより、自分の想いを正しく伝えることがポイントです。
転職理由には、過去と未来の話が両方含まれています。過去とは退職した理由、未来とはこれから叶えたいことです。企業はどちらかと言えば未来に比重を置いて話を聞いています。
仮に言いにくい退職理由があったとしても、未来の部分でどうありたいかをしっかりと伝えることが出来ればズレずに好印象を与えることは可能です。
過去と未来はつながっていて、そのつながりを言語化することが転職理由を明確にするということになります。自分だけののストーリーを整理しましょう。
過去と未来どちらも言語化が出来なかったり、つなげることが出来ないのは自分の現在地がわかっていない状態です。
整理出来ていない状態で、適当に体裁を整えて面接をするとミスマッチを引き起こしてしまいます。その場合は、自分が納得出来る理由が見つかるまでは焦らずに立ち止まることをおすすめします。
過去の経験に引っ張られすぎない
40代になれば20年前後の社会人経験があります。採用する企業としても、その豊富な経験を共有してもらうことで既存従業員の底上げをしてもらいたいという思いもあります。
しかし、経験が長いと新しい職場でもこれまでの常識で物事を考えがちです。
企業側として経験を活かしてもらいたいという思いはあるものの、矯正してほしいとは考えていません。前職の経験が正しいというような姿勢だと受け入れる側と意見がぶつかるかもしれません。
そうすると新しい職場や部署に馴染むことができず、孤立する可能性が高くなります。
もちろん新しい職場で経験を頼られることは、理想的ではあるものの柔軟さが求められます。こうだった、こうあるべきという姿勢が見えてしまうと、人は対話することを避けます。
豊富な知識や経験をひけらかすより、必要な時に経験をもとに手を差し伸べてくれる人のほうが、より良い関係を築くことができます。
人間関係はゼロから年齢は関係なく付き合う
リファラル採用による入社でない限り、転職後の人間関係はゼロからのスタートになります。自分よりも年下の上司や同僚が多く、知り合いがいない状況では、勢いやノリで仲良くなるということは難しいです。
些細なきっかけを見つけ、自ら人間関係を築いていくことは本当に手間と時間がかかります。
また、年下に対して年齢差による優越感を感じている場合は、よい人間関係を築く上ことは難しくなります。「年下だから」という色眼鏡をかけて相手を見ればその態度が自然と出てしまうものです。
年齢は関係なく付き合うという姿勢で、面倒でも馴染むきっかけがあれば努力して交流することが必要です。
新しい職場では中途入社者に対して、お手並み拝見という様子見期間が必ずあります。そのような状況の中、物言わない40代の中途入社者に声をかける人はほとんどいません。
能力を発揮するにも周囲の協力は必要です。新卒でもない限り、周囲がサポートしてくれて自然と馴染むことが出来るという希望は持たないほうがよいでしょう。
人間関係がゼロになった転職後は、自ら発言や発信していくことで、自分を知ってもらうことが最初の一歩として重要になります。
入ってみないとわからないが下調べを徹底的に行う
40代に限らない話ですが、残念ながら転職は入らないとわからないことが圧倒的に多いです。企業としても採用したいという力が強く働くので、余計なことを言わないからです。
また、そもそもの話になりますが、数回の面接でお互いを知るというのは無理があるのです。
ただし面接の情報だけを鵜呑みにして入社するのはリスクが高いです。ウェブなど複数の経路から情報を得てリスクを下げていくことが重要になります。
人間は確証バイアスというものがありますので、都合の悪い情報は見ない可能性があります。特に現職が嫌で早く転職をしたい場合は、良い情報の影響度が強く、客観的に対象企業の情報を整理出来なくなります。
意識して嫌な情報にも目を向けることで、出来る限り正確に企業の輪郭を掴みましょう。おすすめは下記のような複数の転職評価サイトで企業名を検索し、全体スコアやネガティブな退職コメントをメインで確認することです。
同じ部署の従業員コメントがあれば参考になるのでよく見ていきましょう。
また、過去に事件が起きていたりするケースもあります。そのようなインターネット上から消したくても消えない情報を、デジタルタトゥーと言いますが企業のGoogleのサジェストキーワードから調べるのが簡単です。
こちらについても、紹介するラッコキーワードで企業名を検索すれば関連するキーワードは取得できます。筆者も選考していた企業を調べたら横領事件が過去に起きていたことがわかり、そっと辞退したことがあります。
リファラル採用(縁故採用)も選択肢に入れる
知り合いからの紹介で採用することをリファラル採用と言います。最初から知り合いが入社先の企業にいるので安心感があり、企業文化にスムーズに馴染むことがでることが大きなメリットです。
企業側としても、採用コストをほぼゼロに抑えつつ企業文化に合う人材を見つけられるので、個人と企業の双方にとってメリットが大きいトレンドの採用手法です。
ここまででお伝えした転職のリスクは、入社前に見えないことの多さが起因していることが多いです。しかし中で働く知り合いが紹介する企業であれば、かなりリアルな情報を得ることが出来るのでミスマッチのリスクを大きく下げることが出来ます。
もし周囲に頼ることができる知り合いや友人がいるのであれば、早めに相談しておくことで、ポストが空いた時などに声をかけてもらえたりする選択肢が増えます。
変化を恐れすぎると定年前後に苦労する
ここまで、40代の転職で起きたよかったことや悪かったことなど、気を付けるべきポイントをお伝えしてきました。本当にたくさんの検討事項があり、結局は「動かない方が安全なのではないか……」と思う読者の方もいると思います。
確かに一定のリスクは存在していて、失敗する可能性もゼロではありません。しかし、そのままの状況で本当に良いかどうかは客観的に考えるべきです。
終身雇用の時代はもうほとんど終わっていますので、安定して定年まで過ごすことは現実的ではなくなりました。その状況の中でリストラや倒産といった突然の転機を迎える可能性さえあります。
さらに定年や役職定年を迎えた後、数十年は今と同等かそれ以上の収入を得る必要があります。こうした外的な要因で自分や家族をリスクにさらさないためには、ある程度事前に準備しておくことが必要です。
それは今なのかもしれませんし、数年後なのかもしれません。ただ、この記事を読んでいただいた読者の方は、何か変化する必要性を感じているのではないでしょうか。
その感覚を軽視せず、この記事を読もうと思った自分の思いやきっかけを思い出してください。筆者としては転職をおすすめしたいわけでありません。どうありたいか、そして今はどうなのかという自分の現在地知ることが重要だと考えています。
40代で仕事を辞めたいと思ったら意識すること
職種で転職の難易度が全く違う
職種経験の有無が40代の転職難易度を大きく左右します。もし未経験の職種であれば20代などの若年層が競争相手になるからです。当たり前ですが企業はなるべく採用にかかるコストを下げようとします。
比較的年収が高い40代をゼロから育てるよりは、新卒や第二新卒などコストが低い方を優先したいと考えるからです。
転職には以下の組み合わせが存在します。下に行くほど転職の難易度が上がる組み合わせになります。同業種と同職種で全く同じ領域で転職をした場合は、会社を変えただけでほとんど同じ条件で働くことができます。経験を一番評価されやすいので転職も比較的容易に進められます。
異業種と同職種の場合は、職種は変えていませんが業界を変えるので勝手が違うことが多いです。慣れるまでに多少時間がかかることが想定されますが、職種は同じなので勝手がわかれば経験を活かして働くことができるようになります。
同業種と異職種は同じ業界ですが、職種そのものを変えるチャレンジです。事務職から現場職もしくはその反対など、同じ業種の中で興味があった職種へキャリアチェンジすることを言います。職種は未経験扱いのため同業界だとしても難易度は高いです。
どこでも応用が利くポータブルスキルを持っていたり、業界についての理解が深い場合は知見を評価される場合もあります。筆者の採用経験で職種的には未経験に近い状態でしたが、今後ターゲットにしたい業界についてとても詳しかったので採用になった人もいます。
最後にどちらも異なる異業種と異職種の組み合わせについてお話しします。業界も職種も全て変わる環境に挑むことになるので、間口は狭く未経験の募集をしている求人自体が少なくなります。
このケースの場合は、どうしてもやりたい仕事があることが前提にあり、結果的に業種も変えるという背景が考えられます。
業種と業界どちらも変えるキャリアチェンジは、会社との相性以前に職種との相性もわからない状況です。結果として思っていたものと違ったというようなリアリティショックを受け、元の職種や業界に戻るリスクさえあります。
キャリアチェンジをしたいと考えるほど職種に対する憧れがあると、客観的に判断することが難しくなります。
また、そもそもですが未経験の求人はかなり限られます。職種によっては人手不足を理由に未経験採用を積極的に行うこともありますが、自分が応募したい職種がそうとは限りません。
応募したい職種に未経験枠がない場合は、ウェブサイト上から直接コンタクトをとって応募したり企業のイベントに参加するなどの工夫が必要です。
忘れてはいけないことは、どうしてもその仕事がしたいという熱意を真剣に伝えることです。その熱意だけで採用されることはありませんが、未経験なりに貢献できる部分を伝える機会を見つけることが重要です。
そうした行動力も含めて評価される出来れば可能性はあります。逆に通常の選考フローで応募すると、1日何十枚も履歴書を確認する人事の目に留まることはありません。
転職回数より一貫した仕事観
転職回数は選考基準の一つですが、転職回数の多さは昔ほどネガティブな印象ではありません。終身雇用が終わり少しずつですが、転職が当たり前になってきているからです。
仮に転職回数でスクリーニングする企業であれば書類選考の段階で不合格になります。大企業や応募が多い企業は、応募者全員を見ることは出来ないので、転職何回以上という大き目のフィルタとして使われるからです。
転職回数が多くても面接まで進んだ場合は、転職回数の問題はほぼクリアしていると考えて問題ありません。面接では転職回数の多さではなく、転職の考え方を確認します。
これまで、なぜ転職をしたのかという明確な理由と考え方の軸があれば転職回数の多さはプラスに働くこともあります。
筆者も7回転職していますが、それぞれのつながりやその時の考えを明確に伝えることで「転職を繰り返す度に強くなられているんですね」と評価され内定をもらったこともあります。
定年後を見据えて経験を積む
少し先の話になりますが定年後について考えることは、今のキャリアをどうするべきかの課題を見つける良い機会になります。転職を考える場合、多くは現状の不満を解消することに目が向くので、やや視野が狭くなりがちです。
そこに定年後どうありたいかを想像することで、どんな経験を積んでおきたいか意識が出来るようになります。
現役の時は、会社の看板で仕事が出来るので就業している限り心配することはありません。しかし、定年は必ず迎えることになりますし、再雇用されたとしても別職種、低賃金という今より悪条件になることがほとんどです。
そのため、現役である40代から定年後を意識して、自分の力で収入を得られる準備をするべきなのです。
また、自立することは定年を待つ必要はなく、準備が出来た段階で実行するべきです。そのための準備として、本業で経験を十分に積みながら、資格取得や副業などで少しずつリスクを取る練習をします。
継続学習が最強のスキル
筆者はこれまで面接官としてと15年以上求職者の方と向き合ってきました。そこからわかったことは結果を出す人は、継続的に学ぶことを習慣にできる人だということです。
面接時には経歴をもとに判断するので、華やかで立派な経歴を持つ求職者が目立ちます。実際そうした経歴の方が評価され入社することも少なくありませんが、入社後に前評判通りの成果を出せるわけではないのです。
鳴り物入りで入社した人は、意外と早めに退職することが多い印象です。一方で、地道に社内の情報集めたり、自分で不足している知識を補うことで、いつの間にか主力になっている人がいます。
インプットしている期間はあまり目立たず評価もされにくいのですが、学習を習慣に出来ているおかげで時間とともに力がつき、社内での存在感が増していくのです。
筆者が考える優秀な人は、この継続学習を習慣にしている人です。社内のノウハウに限らず、周辺知識も含めてわからないことをそのままにせずに学ぶことで、仕事の解像度が上がりアウトプットの質が変化します。
また、継続学習とは変化に対応するための習慣であり、転職時や入社後という様々な変化に対応して、状況を整理して乗り越える力ということが言えるのです。
試用期間は必要以上に怖がる必要なし
新しい職場で仕事を始めるとき、試用期間中であることに不安を覚える人は多いです。企業から見極められているという感覚で、「もしも本採用されなかったらどうしよう」という不安がつきまとうものです。
試用期間中の解雇以外でも、試用期間を終え本採用を拒否されることも解雇扱いになります。
いずれのパターンも会社都合で解雇することになるので、相当の事情がない限り簡単には解雇はできないのです。具体的な事例としては、採用前にわからなかったことが試用期間でわかった場合です。
それが業務をこなすことに大きな障害になるというもので下記のような項目です。
- 能力の不足
- 勤怠などの勤務態度
- 経歴の詐称
いずれも面接だけではわからないことが多いものです。勤務態度の悪さや経歴詐称は論外ですが、能力の不足だけは、どうしても自分で判断が難しく不安になる要因です。
試用期間は気にしなくて大丈夫ですよと無責任なことは言えませんが、少しでも安心出来るように採用担当視点の考え方をお伝えします。
まず、そもそも1名採用するためには多大な労力とコストがかかっています。一概には言えないですが中途入社1名にかかるコストは、単純計算でも100万円から200万円はかかります。
さらに採用に必要な期間は、求人を出して2、3カ月かかることは当たり前で、長ければ半年など長期戦になります。
転職する側も苦労していますが、採用する側もかなり苦労していると考えてください。企業は当然面接には力が入りますし、お互いやり直しがきかない分ミスマッチを防ぐために、真剣に能力を見極めようとします。
このような苦労が背景にあるので、試用期間で見切りをつけ採用をやり直すということは非常に大きな損失です。結論として、よほど面接時の情報と乖離がない限りは試用期間で終わるという可能性は低いです。
ただし最初の試用期間の緊張を活かして、100%以上の力で走り抜けることは重要だと筆者は考えます。慣れてしまうと危機感が薄らぎ成長も鈍化してしまうからです。
周囲からの信頼を得るためにも試用期間は出せる限りの力で仕事に向き合うことをおすすめします。そういう意味では試用期間は、ある意味で健全な危機感を与えてくれる良い期間と捉えるべきです。
転職エージェントに頼りすぎない
最後に転職エージェントなどのサービスに、頼りすぎないという点をお伝えします。転職は多くの未知の情報と向き合うことになるので、情報弱者である求職者が、一人で転職を成功させることは現実的ではありません。
そうした転職をサポートするという役割で転職エージェントやヘッドハンティングサービスがあります。
転職エージェントの広告は頻繁に見かけるので、誰もが知るサービスというレベルで認知されており、転職を考えたらまず相談する相手として考えられます。
事実として多くの求職者は転職に慣れておらず、変動の激しい転職市場には詳しくありません。そのため自分にどのような価値があり、どのような可能性があるのかを転職エージェントを通して知ります。
転職エージェントを活用すること自体は問題なく、むしろ身近な相談相手としてしっかりと活用すべきです。一方で転職エージェントを頼り過ぎないようにする必要があります。
なぜなら転職活動は非日常と呼べるほどに、日常とは異なる好待遇を受けます。まず転職エージェントからは親身にサポートを受け、カウンセリングにより自己理解も深まります。
一定の期限はありますが、内定まで複数企業を紹介してくれますし、選考が進めば企業対策を含めてアドバイスも受けられます。
もし複数の転職エージェントを利用していれば、その全てから同じ待遇を受けることになるので、自分が偉くなったような浮かれた気持ちになりやすいのです。
しかし、もてはやされ浮かれた状態で、進む選考ほど危険なものはありません。複数内定が出たとしても、冷静に自分の状況を確認することをおすすめします。
ここまでにお伝えした注意点を読み返して、見落としがないか確認してみましょう。
冷たい表現になりますが、親切に感じる転職エージェントは全てビジネスです。友達や親友ではありません、企業と求職者のマッチングで収益をあげることがミッションであり、転職後はほぼ関係はなくなります。
そのため、可能性がある求職者に対しては、競合に決められる前に内定を出せるようにスピードを上げてマッチングするまで紹介サポートを行います。
最初に大量の求人を紹介、応募を促されるのはこうした背景があるからです。そのためあれよあれよと言う間に、エスカレーターのように内定まで辿り着くことも少なくありません。
浮かれた状態でよく考えずに内定承諾をしてしまうと、入社後数か月経ち冷静になったときに後悔することになります。筆者も何度かこの浮かれた状態で入社を決めてしまった経験があります。
文字通り浮かれているので確認すべき点をおろそかにしており、そこが後々のミスマッチ原因になっていました。このようにならないためにも転職エージェントのおすすめではなく、自分の考えで入社する企業を決めていきましょう。